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治験業務における効率的かつ信頼性の高いリモートSDVシステム導入

カテゴリ:医療NEWS, 癌治療 タグ: , ,  投稿日:2017年04月24日

国立研究開発法人国立がん研究センター(略称:国がん)東病院は、治験業務において効率的かつ信頼性の高いリモートSDV (Source Data Verification)システムを、日本マイクロソフト株式会社(以下:日本マイクロソフト)と富士通株式会社の技術支援によりマイクロソフトのパブリッククラウドサービスを基盤にシステムを構築し、治験依頼者である製薬企業のSDVに対して当該システムの導入を開始することとなった。

治験依頼者は、収集した被験者に関するデータをまとめた症例報告書医療機関における記録との整合性の検証作業を行い、データが正確であることを確認するSDVを行っている。SDVは、原資料の持ち出しが禁じられているため、従来は医療機関内でSDVを行う必要があり、医療機関内にSDV専用室の設置・管理などを行う体制整備が必要であった。東病院では年間100を超える治験を請け負っており、14室のSDV専用室は、常に治験依頼者により埋まっている状態であった。一方、治験依頼者においては、医療機関へ訪問するための交通費や宿泊費などのコスト、日中の限られた時間帯での作業による時間調整の負担などがかかるため、SDVの効率的運用が求められてきた。

遠隔でSDVを行えるリモートSDVは、治験実施医療機関に赴き直接原資料を閲覧するSDVと比較して、専用の閲覧スペースの不要化やモニタリングの効率化、費用の削減などのメリットがある一方、閲覧資料が本当に原資料であるかどうかの真正性確保やアクセス・セキュリティ確保などが問題として挙げられる。そこで今回、真正性やセキュリティに配慮し、院内の原資料を遠隔閲覧できるリモートSDVシステムを構築した。

今回開発されたリモートSDVシステムと治験原データ管理システムを連携することにより、真正性が確保された原資料を外部から直接閲覧することが可能であり、医療機関を訪問して閲覧できるSDVと同じデータが表示されるという。また、リアルタイムに原資料が治験原データ管理システムに反映されるため、閲覧内容に時差が生じることもない。開発はコストや事業継続性を意識して、日本マイクロソフトが提供するパブリッククラウドサービス上に、治験原データ管理システムにアクセスし原資料を閲覧するためのリモートSDVシステムを構築した。パブリッククラウドを利用することで、サーバー設置に係る費用を大幅に削減できるとともに、スペックをフレキシブルに変更できることで、利用者の増減に際し問題なく対応可能となった。

本リモートSDVシステムを機に、東病院における病院情報システムはグローバルスタンダードを見据え、今後は、CDISC標準などの海外標準の採用も視野に入れたシステム開発を行い、治験に係る必須書類についてドキュメントの電子化についても、検討して行く予定だという。

(Medister 2017年4月17日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 治験業務における効率的かつ信頼性の高いリモートSDVシステム導入 パブリッククラウドを活用し、グローバル化対応により医薬品開発を促進

血小板活性化因子(PAF)生合成遮断による未解決な神経因性疼痛の緩和

カテゴリ:医療NEWS, 癌治療 タグ: , ,  投稿日:2017年04月10日

神経因性疼痛は既存の鎮痛薬では取り除くことができないのが現状である。この痛みは糖尿病やがんに伴っても発生するものである。神経因性疼痛の発症の持続の分子メカニズムは完全には解明されていないが、ATPやPAFが関連分子として報告されている。しかし、まだ有効な薬剤が開発されていない。そこで、国立国際医療研究センター、国立がん研究センター、東京大学、理化学研究所の共同研究チームは、生体膜リン脂質の多様性形成と細胞機能について研究を行っており、その中でリン脂質メディエーターであるPAFの生合成酵素(LPCAT2)も研究対象としている。今回、研究チームはLPCAT2遺伝子欠損マウスを作製し神経因性疼痛との関連を調べた。

血小板活性化因子(PAF)はリン脂質メディエーターで、細胞外の刺激に応じて合成される。現在、PAFの生合成酵素としてLPCAT1とLPCAT2の2種類が知られている。今回、それぞれの酵素欠損マウスを作製し神経因性疼痛を評価した。疼痛モデルは坐骨神経部分損傷モデルである。LPCAT1欠損マウスは神経因性疼痛の症状の1つであるアロデニアを示したが、LPCAT2欠損マウスはアロデニアが軽減していた。このモデルでは脊髄後角でミクログリアが増加していた。LPCAT2も脊髄ミクログリアに発現している事を確認できた。また、脊髄中のPAFの存在はLPCAT1欠損マウスでは確認できたが、LPCAT2欠損マウスでは検出できなかった。細胞をPAFやATP(神経因性疼痛を誘発する)で刺激するとPAFが産生される。ATP刺激によるPAF産生は、PAF受容体拮抗薬でPAFシグナルを遮断すると減少した。これは産生されたPAFが再びPAFを産生するフィードバックループの存在を示唆している。それゆえに、このループが神経因性疼痛を悪化や持続させるPAF pain loopではないかと推測されている。

共同研究チームでは、このループの遮断による新規カテゴリー鎮痛薬開発へ発展させたいと考えている。そして、既存の薬剤では効かない患者の未解決な痛みを少しでも取り除ける可能性を見出すことを大きな目標としている。

(Medister 2017年4月10日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 血小板活性化因子(PAF)生合成遮断による未解決な神経因性疼痛の緩和 次世代鎮痛薬開発のターゲット候補



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