抗体薬物複合体(ADC)のがん組織中の薬物放出・分布を可視化した画期的な方法を確立

カテゴリ:医療NEWS, 癌治療 タグ: , ,  投稿日:2016年05月20日

国立研究開発法人国立がん研究センター(略称:国がん)は、質量顕微鏡を用いて、抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugate: ADC)のがん組織中の薬物放出・分布を可視化した世界初の評価方法を確立した。

ADCとは、抗体によってがん細胞に標的を絞り、抗体に付加した薬物をがん細胞内に直接届けることでがん細胞を攻撃し、かつ正常な細胞への影響を避けるという目的で設計された、新しいタイプのがん治療薬である。海外、特に米国ではすでに50種類以上のADCの臨床開発が進められており、将来多くのADCが日本にも導入されることが予想されている。

一方で、ADCが抗腫瘍効果を発揮するための必須条件である「ADCががん細胞に到達する」、「がん細胞中で薬を放出する」という2点を正確に評価する方法がなく、ADCの創薬デザインにおいては至適な設計がなされていなかった可能性も否定できない。

今回の国がんの研究グループが確立した手法では、質量顕微鏡を用いることにより、ADCから放出された薬剤を明確に同定することができるようになった。また、放出された薬がどこに、どの程度分布しているかを定性的、かつ半定量的に分析することも可能となった。さらに、薬を放射性同位元素でラベルすることなく評価できるため、従来の方法に比べて正確ながん細胞への薬剤の分布が分かるだけでなく、コストや簡便性の点でも優れているといえる。

本研究は、同先端医療開発センター新薬開発分野、国立研究開発法人理化学研究所及び株式会社島津製作所の研究グループが共同で行ったもので、英科学誌Nature系オンライン科学誌Scientific Reportsに4月21日付けで掲載された。

本研究で確立した腫瘍内薬剤分布の評価方法は、ADCががん組織に到達し、付加薬物ががん細胞まで送達される至適な条件を導き出すに当たって、極めて簡便かつ正確な方法といえるため、今後ADCの精巧な設計のためには欠かせない手法の一つとして期待されている。
(Medister 2016年5月16日 中立元樹)

<参考資料>
国立がん研究センター 抗体薬物複合体(ADC)のがん組織中の薬物放出・分布を可視化した画期的な方法を確立 次世代のがん治療薬 ADCの精巧な設計を可能に

抗体薬物複合体



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