早期膵臓がんの血中バイオマーカー発見

カテゴリ:医療NEWS, 癌治療 タグ: , ,  投稿日:2016年10月18日

熊本大学大学院生命科学研究部微生物薬学分野、東北大学大学院薬学研究科薬物送達学分野、国立がん研究センター創薬臨床研究分野らの研究グループは、全国の多施設共同研究で集積した血液検体を用いて、早期膵臓がん患者の血中タンパク質のうちinsulin-like growth factor-binding protein(IGFBP)2およびIGFBP3の量が変化しており、従来の膵臓がんバイオマーカーであるCarbohydrate antigen 19-9(CA19-9)と組み合わせることで、これまで難しかった早期膵臓がん患者の診断が可能であることを明らかにした。

膵臓がんは早期では自覚症状が少なく、進行してから発見されることが多いこともあり、他のがんに比べて極めて予後不良ながんの一つである。膵臓がんの予後を改善するためには、血液検査によって早期膵臓がんや膵臓がんのリスク疾患 (膵管内乳頭粘液性腫瘍など)を診断する方法の開発が重要となる。そこで、膵臓がん組織中で正常膵管に比べて活性が高いと報告がある遺伝子に対応するタンパク質を膵臓がん診断マーカー候補とし、2種類の最新プロテオミクス技術(タンパク質の大規模な解析技術)を用いて、膵臓がん患者の血中で健常者に比べてそれら候補タンパク質の量が変化しているかを多数の臨床検体を用いて解析を行った。

その結果、23個のタンパク質が健常者に比べて膵臓がん患者の血中で顕著に変化していることを見出した。さらに、膵臓がんバイオマーカー候補を精度よく評価するための高耐圧液体クロマトグラフィーおよび自動解析ソフトを用いた技術を独自開発した。従来のシステムでは1週間に80サンプル程度の解析しかできなかったが、開発したシステムでは1週間におよそ1000サンプルを精度よく解析することができるようになった。また、健常者および早期膵臓がん患者の血中のタンパク質を比較した結果、IGFBP2およびそのファミリーであるIGFBP3の量が、膵臓がん患者で変化していることが明らかになった。本解析では他のがん種も含め600例近い検体の解析を行い、胃がん、胆道がん、肝細胞がん、大腸がん、十二指腸がんなどのスクリーニングにもIGFBP2とIGFBP3が有効である可能性を明らかにした。

本研究の成果により、これまでよりも早期の膵臓がん発見が可能となり、膵臓がん患者の治療成績の向上が期待されるであろう。
(Medister 2016年10月17日 中立元樹)

<参考資料>
国立研究開発法人日本医療研究開発機構 早期膵臓がんの血中バイオマーカー発見―既存マーカーとの組み合わせで診断の性能向上が可能に―



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