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アスタキサンチンの美白効果の分子メカニズム

東京工科大学応用生命科の芋川玄爾教授らは、独自に開発したstem cell factor (SCF)によって表皮の細胞が色素沈着する実験モデルを活用し、美白効果があるとされるキサントフィルカロテノイドの一種、アスタキサンチンの作用メカニズムの一端を明らかにし、医学誌「Arch Dermatol Res.」のオンライン版に掲載(2012年5月26日)された。

芋川教授らは、HEEと呼ぶヒト表皮組織に相当する実験系を開発しており、SCFで処理すると14日間で色素沈着が見られ、メラニン細胞特有の遺伝子発現と蛋白質が検出されるようになる。この系に、アスタキサンチンを加えたところ、濃度依存的に色素沈着が抑制された。SCFによって誘導されるチロシナーゼ (TYR)、チロシナーゼ関連蛋白質1 (TYRP1)、Pmel17、小眼症関連転写因子 (MITF)はアスタキサンチンにより転写・翻訳レベルで抑制された。また、芋川教授らはアスタキサンチンによる美白作用はTYR活性の抑制ではないことを示しており、活性酸素種の消去する作用とも関連しない新たなメカニズムを見出したと述べている。

アスタキサンチンは活性酸素種の消去能がビタミンEよりも高いことなどで実用化されているが、最近になり、細胞内において遺伝子発現レベルで制御し得ることが次第に明らかになり、シグナル伝達経路での更なる研究が期待される。(2012年6月6日)