HER2陽性例への新しい治療が次々と サンアントニオ乳癌シンポジウムより

カテゴリ:医療NEWS, 癌治療 タグ: , ,  投稿日:2013年12月16日

2013年12月10日~14日、米国サンアントニオで“サンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS2013)”が開催され、今後の乳癌治療への道となる研究成果が次々と発表された。中でもHER2陽性例へ治療薬はここ数年、多くの開発が進められており、今回のSABCS2013でもHER2陽性例に関する発表が多く行われた。

例えば、京都大学の戸井雅和氏によって発表された“トラスツズマブとビノレルビンにエベロリムスを追加することは、アジア人でも有効で安全”という、フェーズ3試験BOLERO-3のアジア人の解析で示されたものがある。BOLERO-3試験には、日本を含む21カ国から159施設が参加し、局所進行または転移を有するHER2陽性進行乳癌で、タキサン系抗癌剤による前治療を受け、トラスツズマブによる治療で再発または進行を認めた患者が登録された。全体では569人が登録されたが、このうちアジア人はエベロリムス群が88人(同52歳)、プラセボ群(同53歳)だった。戸井氏は、アジア人では症例数が少なかったために有意とならなかったと考えられるとしていたが、アジア人における奏効率は、エベロリムス群40%、プラセボ群37%で、非アジア人ではエベロリムス群41%、プラセボ群37%となり、アジア人でもその有効性が示唆された。

一方で、HER2陰性例への治療薬は、HER2陽性例よりも少ないといえる。例えば今回のSABCS2013でも、カナダCross Center InstituteのJR Mackey氏より、HER2陰性患者を対象としたプラセボとドセタキセルを投与する群とを比較したフェーズ3試験“ROSE試験”の結果の詳細が発表されたが、ROSE試験では主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を延長しながらも有意な差を達成できなかったことが既に公表されていた。

確かに、HER2陽性例の方が悪性度が高いが、患者割合としてはHER2陽性が乳癌患者全体の15~25%といわれており、HER2陰性患者の方がはるかに多い。つい先日も、WHOが“全世界での乳癌発症率は肺癌に次いで増加している “と発表したばかりだ。今後、HER2陰性例への新しい治療薬の開発にも期待したい。
(Medister 2013年12月16日 葛西みゆき)

乳がん: 治療・検査・療養 (国立がん研究センターのがんの本)
乳がん: 治療・検査・療養 (国立がん研究センターのがんの本)

参照

HER2陽性進行乳癌にトラスツズマブとビノレルビンにエベロリムスの追加はアジア人でも有効で安全【SABCS2013】
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/sabcs2013/201312/534232.html

HER2陰性乳癌にramucirumabとドセタキセルを併用投与したフェーズ3ROSEの結果の詳細が発表【SABCS2013】
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/sabcs2013/201312/534233.html

GSK HER2陽性乳がんとは
http://tykerb.jp/user/aboutHER2/01/

SRL 乳癌HER2遺伝子(FISH)
http://www.srl.info/srlinfo/kensa_ref_CD/KENSA/SRL6126.htm

日本乳癌学会
http://jbcsfpguideline.jp/category3/030.html

ロイター 12年の世界がん死亡者は820万人、途上国で乳がん急増=WHO
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYE9BC02L20131213

IARC GLOBOCAN2012 Estimated Cancer Insidence,Mortality and Prevalence Worldwide in 2012
http://globocan.iarc.fr/Pages/fact_sheets_population.aspx

乳癌診断の新しい道しるべとなるか 血液検査による乳癌診断実用化へ

カテゴリ:医療NEWS, 癌治療 タグ: , ,  投稿日:2013年10月28日

独立行政法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、「がん超早期診断・治療機器の総合研究開発プロジェクト」において、山口大学 医学系研究科臨床検査・腫瘍学分野 末廣 寛准教授の研究テーマ「血液検査だけで乳がんができやすい体質になっているかを調べる技術」を採択した。これにより、当システムの実用化に乗り出したこととなり、乳癌発症の予防や、早期診断・治療に役立てる方針だ。こうした「がん発症の予測診断」は世界初という。

従来の乳癌検診は、癌を発症した患者の「がん組織」を検査の対象としているが、今回採択されたシステムは「癌になる前」の時期に行う検査であり、検査対象は癌組織ではなく、「血液細胞DNA」となる。この点が従来の乳癌検診とは根本的に異なり、あくまで「乳がんになりやすさに関わるDNAコピー数多型」を調べることで、被験者が乳癌になりやすい体質であるか否かを判定し、将来の乳癌発生リスクを予測する。

日本における乳癌検診は、1987年度から老人保健法にて「30歳以上に問診・視触診検診を逐年で行う」と定められ、全国的に導入された。さらに2000年度からは50歳以上,2004年度からは40歳以上に対し、マンモグラフィ併用検診が行われている。しかし例えば35歳未満の若年層の場合は、乳房組織が高齢女性に比較して高濃度乳房であり、マンモグラフィによって乳癌を検出することが難しいため推奨されない。また、近年は食生活の変化などにより乳癌患者が増加傾向にあり、日本では女性の癌の一位となっている。その一方でマンモグラフィをはじめとする画像診断には限界もあり、特に40歳未満では触診・マンモグラフィだけで早期乳癌を発見できない場合もある。
これらの点から考えても、「乳癌になりやすい体質」と判定された症例では、食生活や運動・喫煙習慣などのライフスタイルの改善や、定期的な乳癌検診を受ける動機づけを行うことが可能となり、乳癌発症のリスクを抑制することが期待されている。
(Medister 2013年10月28日 葛西みゆき)
科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン 2疫学・診断編 2013年版
科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン 2疫学・診断編 2013年版



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