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「がん登録推進法案」成立の見通し 日本における必要性と問題点

2013年10月29日、自民党、民主党、共産党など超党派の国会議員連盟「国会がん患者と家族の会」が会合を開き、全国のがん患者の情報を国が集約する「がん登録推進法案」の骨子をまとめた。国会へ提出し、現在行われている臨時国会中に成立を目指す。

日本では1950年代から都道府県単位による「地域がん登録」の動きは始まっていた。現在でも国立がん研究センターが中心となって地域がん登録データをとりまとめているが、あくまで努力義務。全都道府県での地域がん登録の実施は、昨年夏にはじめて可能となった。現在のところ、2013年になってようやく2008年の統計データが公表されているが、このデータも全都道府県によるものではなく、患者数は制度の高い一部の都道府県データからの推計であり、生存率の把握も出来ていないのが現実だ。また仮に多重癌だった場合は、別個の癌として集計されている。

では「がん登録推進法案」が成立すると何が変わるのか。日本全国の地域ごとの癌患者数が明確になり、どのような治療が効果的といえるのか、患者は何年生きられるのかが分かるようになる。地域ごとのライフスタイルとの関連も見えてくるだろう。
しかし問題もある。例えば厚生労働省は4年前から蓄積している診療報酬明細書データ約58億件のうち、80%が特定健診データと突合できず、生活習慣病対策に活用できておらず、原因調査に乗り出したところだ。また、「がん登録推進法案」の素案では、全数調査が目的となるため患者の同意なしに実名での登録としている。ではこの情報は誰がどのような仕組みで管理するのか。もちろん漏えいした場合の罰則も規定されるが、厳重なセキュリティにより研究として利用できないのでは本末転倒であろう。

だが日本は現在、3人に1人が癌で死亡すると推計されている。癌治療先進国ではすでに法律化され効果が出ているが、これからの日本にとって、この法律が癌患者数減少の第一歩となることに期待したい。
(Medister 2013年11月5日 葛西みゆき)
がん・統計白書―罹患/死亡/予後 (2004)
がん・統計白書―罹患/死亡/予後 (2004)