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【シンガポール】効率性を追求したシンガポールの医療制度

シンガポールの医療関連コストは自国のGDPの4%を下回る(2010年)。これは米国の17%と比較すると驚くべき数字である。低コストにも関わらず、高品質の医療サービスを提供できる秘訣はどこにあるのだろうか。

まずシンガポールでは全体の医療費の1/3は個人が支払っている。米国の場合、医療費の9割は保険会社、雇用者、政府が支出しているのが実状だ。このことからシンガポール人の多くは節約志向であることがうかがえる。小さな怪我などで通院することは余り無いということだ。また保険制度に着目すると、シンガポールでは被雇用者が収入のうち20%、雇用者が13%を毎月積み立てる仕組みとなっている(CPF-中央積立基金)。一部の低所得者を除く国民が自身の医療費を管理することで、国からの歳出は抑えられるのである。

さらに国の医療費を削減する方法として、政府は2003年から、国内の全ての国立・民間病院に医療サービスの料金を患者に明確に開示することを義務付けた。例えば入院費に関しては、事前に病棟・病室に関する情報を患者に公開することが必要となった。あらゆるサービスを事細かに「料金表」として提示することにより患者にとって選択肢が増えると同時に、病院間の競争を高めることになり、各病院がコストを抑えることに積極的になったのである。また医療機関の透明性が高まり、これらの情報を全て国が管理することが容易となった。

以上の内容からシンガポールの医療制度は米国など他の先進国に比べ、効率性を高めることに非常に積極的であり、その結果多くの医療機関の質の向上にも繋がった。近年医療ツーリズムが盛んになってきた要因の一つでもあり、シンガポールの医療業界の今後のさらなる発展に期待が持てる。だがその一方、国内の高齢化等により医療コストの上昇は避けられないとの見方もある。(Medister-TARO 2012年9月18日)
医療制度改革の国際比較 講座 医療経済・政策学 第6巻
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