【シンガポール】医師不足のシンガポール医療(2)
また人材の海外への流出という懸案事項もある。
海外の大学で医学部を卒業し、母国に戻らないケースが問題視されているのだが、原因の一つとして政府がこれらの卒業生に働く環境を設けるための具体策を提示してこなかったことが挙げられる。国外と国内は学ぶことに差異があるため海外大学の卒業生に対する医師免許の審査は非常に厳しいのである。
厚生労働省はまず彼らの金銭的な面での負担を考慮し、転勤手当や交通費を出すなどの解決策を打ち出した。また国内の医療機関と提携を組み、海外で直接採用することを今後の方針の一つとしている。
具体的には、海外大学に在学中の医学生をまずインターンとして採用することにより有能な人材を獲得することが狙いだ。経済的に勉学が困難な学生に対してはPre-Employment Grant (PEG)という補助金制度も存在する。また英語圏で医療を学んだ人に対してはより寛容になり、シンガポールの医療現場にスムーズに移行するためのサポート体制を築き上げることを同省は明確化した。
シンガポール医療委員会は毎年海外大生を対象とした試験を実施し、これを通過した者にも医療行為を認めている。今後の医療を支える人材として有望視されているのはシンガポール人だけではない。外国人の医学生にも期待が寄せられており、彼らにも上記と同様の研修・留学制度が設けられている。だがシンガポールで将来的に働く確率が低いとの見方もあり、彼らに対する補助金は減額するべきとの声も挙がっている。
国内、国外の医学生にいかに対応し、医師数のバランスを保つかが当面の課題となりそうだ。