【シンガポール】普及期にあるシンガポール版HER(電子カルテ)
シンガポールの公的医療機関を複数運営するMOHホールディングスの子会社であるIntegrated Health Information Systems (IHIS)はシンガポールのヘルスケア業界の発展にITという側面から貢献している。国内にある全ての公的医療機関(総合・専門病院含む)に自社のITサービスが行き届くよう製品開発に努め、医療機関のワークフローの効率化に向けて尽力している。例えば同社は病院経営のサポートの一環として、運営者が電子ツールを用いることによって患者数、病床数に関わる費用や収益を管理できるシステムを構築した。また患者のケアの向上のため、同様の仕組みでスケジュールやカルテがチェックできるようITを実際の医療現場にも積極的に導入している。クラウド化も進められており、病院が持つ膨大な情報の流出を防ぐため安全性などにも細心の注意を払っている。
これらのITサービスを統合し、利便性を追求することにより医師がいつ・どこからでもアクセスできるようIHISは日々試行錯誤を重ねているのだ。着目するべき点は、これらのデータは一つの病院で管理されているわけではなく、権限さえあれば他の病院にいる医師も閲覧できることだ。例えばある病院にそこでは対応できない患者がいる場合、より専門的な病院に情報を瞬時に送ることができ、結果スムーズに対応できる。
また医師・ナース・患者のコミュニケーションをより円滑にするため、コンピューターを通して連絡が取り合えるようチャット機能などを備えていることもIHIS製品の大きな特徴だ。アイデアとしては既存のIT技術を模倣しているが、非常に画期的なシステムであることには間違いない。例えば会話が困難な患者が代わりにキーボードに文字を打ち込むことにより、医師・ナースは患者が何を求めているかを瞬時に把握することができる。今後数年でシンガポールの医療現場がオペ室・病室を含めさらに大きく改善されることが期待される。(Medister Taro 2012年10月24日)
<参考情報>
Integrated Health Information Systems
スマホ、タブレットが変える 新IT医療革命 (アスキー新書)