【シンガポール】株式会社による診療所経営
近年のシンガポールの経済成長は目を見張るものがあるが、その成長を支える主要産業の一つとしてヘルスケアが挙げられる。欧米に続きシンガポールでは多くの医療機器メーカー、製薬会社などが市場参入し、M&A(企業買収)を繰り広げることにより規模を拡大し、グローバル企業への発展を図っている。また上場企業の中には専門医療に留まらず、医療機関の経営会社として複数の病院を持ち、多角的に事業を展開している企業も見られる。例えば今年7月にクアラルンプールとシンガポール市場に平行上場したマレーシアの病院運営会社、IHH ヘルスケアはパークウェイ・パンタイ(PPL)というグループを傘下に置いているが、元々このグループはシンガポールのパークウェイとマレーシアのパンタイグループを合併したものだ。PPLは中国、香港、インド、ベトナム等にも進出し、合計で17の病院、60以上の診療所を経営している。また放射線医学、病理学などに関する研究機関も有しているため総合ヘルスケア会社としてのイメージが強い。同様のビジネスモデルで収益をあげているシンガポール発のラッフルズメディカルグループもインドネシア、ベトナムなどを含めた東南アジアの領域で重要な位置を占めている。
より専門的な分野で活躍している企業の一つとして漢方薬を扱う余仁生(ユーヤンサン)という会社が挙げられる。2000年にシンガポール証券取引所に上場したこちらの会社は1000種類以上の漢方薬を取り扱っており、開発から販売までのプロセス全体を管理している。マレーシアと香港に工場を構え、東南アジアに加えて米国、オーストラリア、カナダ等にも商品を輸出している。小売店舗数は90を超え、この他にも診療所を複数経営している。消費者の健康志向ニーズの高まりを受け、店舗販売の他にオンラインでの注文にも対応している。このように独自の販売網を確保している点がこの会社の大きな強みでもある。また消費者のニーズを的確に察知する能力にも長けている。
大手の病院運営会社の競争が激化する中、ユーヤンサンのような専門会社がいかに独自のポジションを確保するか今後の動向に注目したい。
<参考情報>
IHH ヘルスケア
ラッフルズメディカルグループ
ユーヤンサン