【フィリピン】カトリック教会が否認する避妊法案
現在フィリピンでリプロダクティブヘルスライツ(生殖に関する健康・権利)の法案が多くのメディアの注目を集めている。以前までは285人の議員のうち185人程が支持していたと見られ、議決に必要な票数は十分に集められると考えられていたが、11月25日に行われた投票では131人ほどしか出席しなかったため承認されなかった。この法案に関してはカトリック教会からの反対が強く、来年5月の議会選挙までに承認される可能性は一段と低くなった。
法案の主な内容は政府が国民に対して無償で避妊法を指導することに加え、家族計画に関する情報提供及び中等学校に対する性教育の実施である。フィリピンでは中絶は基本的に違法であるが、やむを得ない場合は適切なカウンセリングを行った上で手術を受けることができる。フィリピンは東南アジア諸国の中でも新生児死亡率が非常に高いため、国連からも改善を求められていた。
同国のベニグノ・アキノ大統領は産児制限に関する情報提供は慢性的貧困など経済的問題を解決するために必要不可欠であると述べている。避妊薬は販売されてはいるものの、多くの低所得者にとっては一週間に得られる収入と同額であるため、購入する人は少ない。既婚のフィリピン女性の34%程しか利用しておらず、これは世界の平均利用率62%に比較すると非常に少ないことがわかる。
この法案は倫理的に問題があり、罪深いものである、というのがカトリック教会の主張である。また積極的な避妊の推奨は避妊薬・コンドームに大量の「無駄銭」を投じることになり、医療分野の本質的な改善には繋がらないと述べている。国会議員は教会が行う反対運動が今後の選挙に影響することを恐れ、法案を支持してはいるものの賛成票を入れることを躊躇しているのだ。実際カトリック教会の聖職者たちと個人的な繋がりを持つ政治家も多い。倫理違反であるか否か、という議論も重要だが、国民の健康・命を守るという観点から最も効果的な方法を模索することが求められる。(Medister Taro 2012年12月25日)
中絶と避妊の政治学―戦後日本のリプロダクション政策 | |
ティアナ ノーグレン,Tiana Norgren,岩本 美砂子,塚原 久美,日比野 由利,猪瀬 優理 |