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【マレーシア】少しずつ進む乳がん検査と患者ケア

民間系医療施設プリンスコートメディカルセンターの調査によると「20人に1人のマレーシア人が乳がんを発症するリスクを抱えている」と言うこれまでの一般的な認識は正確ではなく、実際には他の新興国に並び、11人に1人の割合で乳がんの患者(日本は18人に1人、米国は8人に1人と言われる)がいると見られている。2007年のNational Cancer Registryの報告ではがん患者数の18.1%が乳がんの患者であり、それに続き結腸癌、肺癌の患者が最も多い。

乳がんの患者数に関するデータは乏しく、保健省が発信している情報も過去5年間更新されていない。実際の患者の数が報告されている数より多いと見られているのは、時間の経過もあるが、乳がんが発見しにくい病気であることが理由でもある。また中には乳がんを発症しているにも関わらず、病院に足を運ぶことを拒んでいる人もいる。

乳がん患者に対するケアがマレーシアの国全体に行き届いていないことが主要因であり、国立がん学会(NCSM)は乳がんの教育・ケアを促進するために毎年様々な啓蒙活動を行っている。活動を開始してから今年で16年目になり、これまでに275万リンギット(約7150万円)が集まり、乳がんの研究・治療に使われてきた。また啓蒙活動の一環として、100万個以上のピンクリボン、チラシが配布された。NCSMは生活に困窮し、適切なケアを受けられない高齢者やシングルマザー向けに乳がんの教育プログラム、無料のマンモグラフィ検査を実施し、問題解決に努めている。さらにNCSMは低所得者以外に医療施設が少ない地域で暮らしている人たちを対象に様々なサービスを無償で提供することを発表した。

乳がん・癌全般に関する知識が無い人はマレーシアでは非常に多く、癌がそもそも何なのかわからず、腫瘍イコール癌、などと誤解している人も少なくない。これまでに400人程の女性が上記のマンモグラフィ検査を受けてきたが早速数名から癌が発見され、早期治療を受けている。NCSMは乳がんの早期発見の重要性をより多くの人に認識してもらうことを最大の目標とし、積極的に情報を発信している。また今後の課題として検査以外にも治療・アフターケアまで一貫したサポート体制を整えることも視野に入れている。(Medister Taro 2012年11月9日)

マンモグラフィによる乳がん検診の手引き―精度管理マニュアル
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