【マレーシア】看護師の雇用問題
マレーシア政府は国内の看護師の雇用問題を解決するため、私立病院に看護大学の卒業生をより多く採用するよう呼び掛けている。保健省の先月の発表によると未就職の卒業生は現在およそ8000人に上る。詳細はまだ明らかにされてないが、奨励金などを病院に交付することにより採用活動を促進させる狙いがあると保健大臣はThe Star Onlineの取材の中で語った。
看護協会の試験に合格した者でも多くの場合、直接病院で働ける人は少ない。即戦力を求める私立病院は大抵国立病院、保健省等での経験がある者を採用し、新卒採用は余り行わない傾向にある。そのため学校を出た多くの若者が実務経験を積めず、時が経つにつれ益々採用されにくくなるという現実に直面している。
また保健省は今月1681人の有資格者に対し面接を行い、一定数を同省に採用することを発表した。さらにシンガポールでも見られたように、最低1年の実務経験を特定の病院・診療所で積ませ、直接採用に繋げる研修制度を整えることを同省は考えている。
だがこれらの解決法を疑問視する者も多い。何故なら数字だけを取ってもあまり現実的ではないことが分かるからだ。Free Malaysia Todayによると民間セクターの看護師の採用枠は毎年約1000~1500と非常に少なく、看護大学の卒業生が毎年1万人を超えるということを考慮すると、とても狭き門であることがわかる。冒頭で述べた8000人という数字も納得できる。
問題はそれだけではない。多くの卒業生は在学中、学生ローン(PTPTN)を受給しているため政府に返済する必要がある。だが中々仕事に就くことができないため、返済が滞ってしまうのだ。
これらの問題の根源として看護大学が増えすぎた(それに伴う学生の受入数の増加)という点が挙げられる。大学側にとっては受入数の増加は好都合であり、学生が払う3年間分の学費の約半分を収入として計上している(一人あたり約2万5000リンギット=65万円の収入)。病院の採用枠を増やすことは雇用問題解決するための一つの手段だが、看護師の供給過剰を止めるためにも、看護学科などをこれ以上増やさないようにする必要もあるのだろう。(Medister Taro 2012年11月12日)
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