医療NEWS

【マレーシア】IHHヘルスケア


前回の記事で紹介したマレーシアの病院運営会社のIHHヘルスケアが8月に上半期の財務報告書を公表した。売上高は前年比65%増の28億リンギット(10月2日現在:約716億円)、粗利益は35%増の2億5030万リンギット(10月2日現在:約64億円)であった。これに患者の入院から発生する売上高(入院時生活療養費)を加算すると前年比137%増の40億リンギット(10月2日現在:約1023億円)、粗利益は139%増の4億4390万リンギット(10月2日現在:約114億円)となり、非常に高い成長率を記録した。決算関連資料には以下の4点が高収益の要因として挙げられている。

一点目は今年1月にトルコの民間病院グループのアジバデム社に出資参画(60%の株式を取得)したことだ。同社はトルコ国内で14の病院と8ヵ所の診療所を運営しており、病院事業の他に病院給食、病院の設計・デザインの事業等も手掛けている。東南アジアに限らず、今後さらなる成長が見込まれる中東へネットワークを拡げていることがIHH社の発展を加速させていることが分かる。

二点目は同社が今年7月からシンガポールで運営を始めたマウントエリザベスノベナ病院からの収益だ。ノベナは同国の新たな医療ハブとして注目されているが、この病院は本来の医療サービスに高品質なホテルサービスを融合させることで独自の領域を獲得した(Hospitelと同社は呼ぶ)。主に富裕層をターゲットとしているが将来的には全ての階層の患者を呼び込む方針だ。

そして、三点目は既存事業の効率化、四点目にアジア圏における医療需要の増加と続く。人口の高齢化、医療ツーリズムの発展などが主な要因だ。

これに伴いマレーシアとシンガポールの市場に平行上場したことが投資家の注目をより一層集めることとなった(IHH社は三井物産子会社のMBKHP社が約3割の株式を保有している事でも知られる)。上場初日の株価は約10%高となりおよそ20億ドルの調達額となった。医療業界は景気に左右されにくい将来性のあるビジネスとして投資家の間では高く評価されている。

今後の海外展開に関して同社は中東、北アフリカ(エジプト、リビア等)、中東欧などさらなるグローバル化を目指している。アジア圏外の領域に進出するにあたり、政治的・文化的要因を考慮し柔軟に体制を整えることが今後の成長の鍵となるに違いない。(Medister Taro 2012年10月2日)

<参考情報>
IHHヘルスケア ファイナンシャル・レポート

永続発展する価値ある企業の条件
永続発展する価値ある企業の条件