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がん転移の早期発見に期待 血液中のがん細胞を分離・回収する装置

it-won-t-hurt-11784512015年10月9日、愛知県は、名古屋大学ならびに愛知県がんセンター愛知病院などを中心とした研究グループが、血液中からがん細胞を生きたまま分離し、回収する新装置を開発したと発表した。独自の「マイクロ流体チップ」を用いて、特定の単一細胞を分離する技術(単一細胞分離技術)と、分離した単一細胞を回収する技術(単一細胞回収技術)を確立し、これらを組合せることで、標的とする細胞(今回はがん細胞)の分離・回収装置の試作機を完成させたというもの。この技術により、血液中のがん細胞(血中循環がん細胞)を、生きたまま取り出すことができ、従来の方法を上回る高精度・短時間での分離・回収か可能になった。この装置を活用すれば、「がんの転移の早期発見」につながるのではないかと、期待されているという。
この方法であれば、患者からはわずか5mlの血液を採血するだけで検査ができるため、従来のように、実際に臓器に針を刺して行う生検などの検査と比較し、患者への負担が小さくなる。

これまでにも、がん転移のメカニズムとして、がん細胞が血液中を通って移動し、そこから周辺臓器へもぐりこみ、増殖することが分かっていた。血液中を流れるがん細胞を採取できれば、がん転移を早期に発見することや、抗がん剤の治療効果を検証することも、理論的には可能であると考えられていた。しかし、血液中を流れるがん細胞数は、血液中の細胞からみると、およそ6億分の1と、極めて少量であるため、検出装置の開発が進んで来なかったのが現状である。

ここ数日、人気タレントの「北斗晶」さんが受けた、乳がん手術の内容や、今後の治療方針などが大きく報道されている。北斗さんの場合、ご本人が乳房の異変に気づいてから数か月であるにも関わらず、乳房の全摘出となったと報道されたことは、記憶に新しい。5年生存率は50%だとも伝えられている。

今回の研究成果が製品化され、一日も早く臨床現場で活用されることを期待したい。
(Medister 2015年10月14日 葛西みゆき)

<参考資料>
愛知県 「知の拠点あいち」重点研究プロジェクトにおいて、単一細胞の分離・回収装置を開発しました!

がん転移研究の実験手法
がん転移研究の実験手法