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アスピリンによるがん転移抑制の作用機序

アスピリンといえば解熱剤として医療関係者のみならず一般市民にも周知されているメジャー薬である。解熱効果以外にも痛み止、狭心症などにも効果があることが知られているアスピリンだがこの頃、がんの拡散を阻害できる可能性があるという論文が医学誌[Cancer Cell ]に発表された。

論文を発表したのはオーストラリア・メルボルンにあるピーター・マッカラムがんセンター研究チームである。アスピリンにはこれまでもがん転移を抑制する力があると言われてきたが仕組みが知られていなく確証を得られていなかったのが現状である。しかし、この研究チームではリンパ管内の細胞を調べた結果がん移転とリンパ管内に出現する遺伝子との関係について明らかにしたのだ。

そして、この関係こそが前述のアスピリンががん転移を抑制するという都市伝説を解明する糸口になったのだ。がん転移時にはリンパ管内にある遺伝子が発現する。その遺伝子は体内において炎症を引き起こす可能性が高いと言われている。

ここで出された結果は、がん移転のときに発現する遺伝子は体内にて炎症を引き起こすので炎症を起きないようにすればがん移転がしないのではないのかというものであった。実際、炎症の際に拡張したリンパ管はがん細胞が転移する効率的なルートになるという。故に、リンパ管拡張を抑制するアスピリンなどの坑炎症薬はがん移転抑制に効果的であるといえる。

しかし、アスピリンを毎日服用すると胃疾患のリスクが高まるといわれている。その反面、大腸がん、肺がん、咽頭がんの発症率を低下させるという研究結果も発表されている。がん転移を防ぐという医療関係者らの永遠の課題の即効薬は病院でも研究所でもなく一般家庭に眠っていたのかもしれない。(Medister. 2013年4月30日 桐生賢汰)

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