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アトピー性皮膚炎の新たな混合ワクチン療法

アトピー性皮膚炎(AD)は、Th2細胞により産生されるIL-4をはじめとしたT-ヘルパー(Th)2サイトカインの応答により引き起こされる慢性の炎症性皮膚疾患である。ADの患者は近年増加しており、20歳以下の10人に一人はアトピー性皮膚炎だとも言われている。治療法にはステロイド剤やタクロリムス外用薬、抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬などが使われるが、対症療法として使われているものの、確実性の高い治療法には至っていない。

三重大学医学部皮膚科学講座の水谷 仁教授らのグループは、マウスのモデル系において、熱殺菌カルメット•ゲラン菌(BCG)およびM. kansasii抗原85B混合ワクチン接種により、調節性T細胞を誘導してアトピー性皮膚炎を緩和することを発見し、医学誌「British Journal of Dermatology」に報告(Volume 166, Issue 5, pages 953–963, May 2012)した。

カルメット•ゲラン菌(BCG)は結核を防止するために使用されており、強力なTh1サイトカイン誘導体として使われている。一方、抗原(Ag)85BはTh1サイトカイン産生を誘導するマイコバクテリウム属の菌種の分泌タンパク質だ。

水谷教授らは、ADのモデルマウスとしてケラチン14プロモーターが誘導するカスペース1過剰発現トランスジェニックマウスを用い、3週齢で熱殺菌BCGと4週齢から11週間・週2回のAg85B投与、4週齢からAg85B単剤療法、3週齢から熱殺菌BCG単剤療法、生理食塩水投与の条件で検討した。皮膚病変、サイトカインmRNAの発現量、血清中IL-18とIgEの量を検討項目とした。また、脾臓において誘導性Foxp3+制御性T細胞(iTreg)、IL-10産生T細胞、インターフェロン(IFN)-γ/IL-4/IL-17産生T細胞を評価した。

その結果、生理食塩水と熱殺菌BCG単剤療法では重篤な皮膚炎が見られたが、熱殺菌BCGとAg85Bの混合療法では、皮膚病変とマスト細胞の浸潤を有意に抑制することができた。血清中のIL-18とIgEの量も有意に抑制されていた。混合療法では、脾臓のiTregの数は正常で、IL-4/ IL-17産生CD4+ T細胞は減少していた。Ag85Bの単剤療法は、効果は限定的だった。

以上より水谷教授らは「熱殺菌BCGとAg85Bの混合ワクチン療法は、ADの新たな治療戦略として考えられる。」と述べている。(Medisterニュース 2012年5月24日)