インドの癌死亡率
トロント大学(カナダ)のPrabhat Jha氏らにより、インド国内の年齢別死亡率と特定の癌からの総死亡数が、まとまったデータとして初めて医学誌「The Lancet」に報告(5月12日号:Volume 379, Issue 9828, Pages 1807 – 1816, 12 May 2012)された。
Prabhat Jha氏らは、2001年~2003年にかけて、130人以上の医師が調査に参加し、インド国内で6,671ヶ所の地域の110万戸で死亡した122,429人が調査対象になった。
122,429人の内、7,137人は癌による死亡者であり、2010年には国内で556,400人が癌で死亡していることが想定された。癌死亡者数の内、30歳~69歳の395,400人(71%:男性200,100人、女性195,300人)の主要な部位別癌発生数は、男性では、口腔咽頭癌(45,800人:22.9%)、胃癌(25,200人:12.6%)、肺癌(22,900人:11.4%)、女性では、子宮頸癌(33,400人:17.1%)、胃癌(27,500人:14.1%)、乳癌(19,900 人:10.2%)という結果であった。タバコに関連する癌は、男性の42.0%(84,000人)、女性の18.3%(35,700人)と推定された。10万人当たりの癌死亡率は地方では男性95.6、女性96.6であり、都市部では男性102.4、女性91.2だった。非識字者の男性で106.6、教育された男性では45.7、非識字者の女性で106.7、教育された女性では43.4という結果になり、教育レベルが癌死亡率に大きく影響していた。また、子宮頸癌は、ヒンズー教の女性で340に対し、イスラム教徒の女性は24という遙かに少ない値になった。
以上の結果から、Prabhat Jha氏らは、「タバコに関連する癌と、子宮頸癌の予防と、治療できる癌の早期発見が、インドの癌死亡率を改善できるだろう」と述べている。
なお、参考までに、日本では、2010年の人口10万人当たり癌死亡率は、男性で343、女性では219という統計データがあり、部位別には男性で肺癌、胃癌、肝臓癌、女性では肺癌、胃癌、結腸癌という順だった。教育レベルや宗教による生活環境の違いなどと健康状況を比較検討できる点で、インドの健康調査は今後も興味深いデータが示されるだろう。(Medisterニュース 2012/5/15)