インフルエンザが流行
ワクチンは確保できているの?という、脅迫じみた、連日の電話に、ノイローゼになっている先生方も多いと聞きます。が、そうした一方で、そのワクチン。どこまで有効なのか?疑問があるという事実が、素人さんの間にも広まっています。あの人は、ワクチンを打ったのに、インフルエンザになったとかいう話が広まっているのです。だから、なったらなったときとばかり、ワクチン接種をしない一般の人も多くなってきました。その年のインフルエンザ・ウイルスに有効なワクチンは、その年の流行が予測されたインフルエンザ株に対してのみ、有効なのですね。毎年接種しなければいけません。おまけに、予測したウイルスが外れたり、ウイルスが変異してしまえば効果が無くなります。効果が無い、というのは、インフルエンザ発症が防げないという意味。ウイルスの型にきっちり合っていなくても、症状はいくぶん軽くなります。ある医師は、ウイルスとワクチンとのいたちごっこだとも言います。たとえそうだったとしても、インフルエンザになってしまった場合の重症度を抑制するので、いいじゃないかという声もあります。一般の人の、ワクチンは完全にインフルエンザは防げないけれど、打っておけば、なっても軽く済む。という俗諺は、ある意味正しいのです。
それで、インフルエンザ・ウイルスの、変異しない部分に特異的に反応して、
抗体産生をさせるようなワクチンができば、そのワクチンを一回接種するだけで、永続的にインフルエンザにならなくて済みます。たとえ、新型のインフルエンザがどんどん出てこようとも。こうした、汎用インフルエンザ・ワクチンの開発が、急ピッチで進んでいます。だから、そのワクチンができるまで、接種しても無駄という人もいますが。では、少し待てば、汎用インフルエンザ・ワクチンができるのでしょうか?いや、話はそれほど簡単ではないようです。ウイルスの外側にある不変の領域は、まだまだ見からないし、その部分をウイルスから分離したり、遺伝子工学によってそれを作り上げたりして、実験するのはきわめて困難です。ですので別のアプローチも、とられています。その一つは、免疫システムを活性化して、感染細胞が新しく変異したたんぱくを持つウイルスの培地になる前に、感染細胞にダメージをあたえようというもの。それじゃあ、免疫力を高めましょう、なんていう健康法のレベルとどう違うの?といわれるかもしれません。それだけではなくて、免疫システムを活性化する、何らかの物質を見つけようというものです。だから当面のところ、われわれにできるのは、症状は軽くなるのだから、ワクチンを接種する。そして、免疫システムを活性化する食事なりサプリメントなりをとる、といった手立てでしょう。ですので、感染そのものをブロックするのは、まだ無理です。ある程度できるのは、重篤な症状になるのを避ける手立てです。ワクチン実用化はまだまだ先の話です。
(三川恵子)