インフルエンザA(H1N1)pdm09による妊婦の入院率
2009年の新型インフルエンザは全世界で1万人以上の死者を出し、我が国でも多くの対策が取られた。高齢者や幼児の感染率が高いとされ、妊婦は新型インフルエンザA(H1N1)pdm09ウイルス感染により重篤化するリスクが高まると言われるが、新生児および母体に対する全体的な影響についてはデータとしてほとんど知られていなかった。
Kaiser Permanente Georgia(米国)のDavis RL.氏らは、医療保険グループ法人Kaiser Permanenteの5つのグループでの2008年7月1日から2010年5月31日までの出生例を解析し、医学誌「J Infect Dis.」に報告(2012 Aug 2)した。
107,889例の母親に対し、111,158例が出生し、368 (0.3%) 例が季節性インフルエンザ、959 (0.9%) 例はインフルエンザA(H1N1)pdm09と診断され、107,688例はどちらでもないという診断結果だった。季節性インフルエンザに対するインフルエンザA(H1N1)pdm09の診断をされた妊婦は、診断から30日以内(インフルエンザA(H1N1)pdm09の:季節性インフルエンザ=27% vs. 12% ; オッズ比 2.84)に入院する可能性が高かった。診断から2日以上経ってから抗ウイルス薬の治療を受けたインフルエンザA(H1N1)pdm09の妊婦は、2日以内に抗ウイルス薬の治療を受けた患者よりも入院率(オッズ比3.43)が高かった。季節性インフルエンザの母親は、胎内発育遅延児の発症率(オッズ比1.59)が増加していた。
以上よりDavis RL.氏らは、「この大規模試験により、インフルエンザA(H1N1)pdm09に罹患した妊婦は、入院のリスクが増加し、抗ウイルス薬による治療が遅れることにより入院リスクが高まった。」と述べており、妊婦の早期診断の重要性が改めて示唆された。(Medister 2012年8月6日)