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エイコサペンタエンとドコサヘキサエン酸の摂取効果は、健康な高齢者では効果が検証できない

エイコサペンタエン酸(EPA)は医療用医薬品としては閉塞性動脈硬化症、高脂血症治療薬などの治療薬にもなっているが、認知症患者への投与で認知機能の改善効果も知られ、研究が進められている。一方、ドコサヘキサエン酸(DHA)は心臓病のリスク低減や、アルツハイマー病への効果が検討されている。肝油、ニシン、サバ、サケ、イワシ、ナンキョクオキアミなどはEPAやDHAを豊富に含み、食事で一定量を手軽に摂取できる栄養素でもある。

ウプサラ大学のBenedict C氏らは、EPAとDHAの摂取量により、高齢者の認知テストの点数、脳容積がこれらの脂肪酸の食事摂取量に影響されるかを前向きコホート研究により検討し、医学誌「Age (Dordr)」に報告(2012 Jul 13)した。EPAとDHAの摂取量は、認知機能の健康な70歳の高齢者252名(女性122名)に対し、7日間の食事プロトコルによって決定された。75歳で、参加者の広範囲な認知機能を検討し、MRIにより脳の容量を計測した。
性別や年齢で調整するモデルA、ライフスタイルで調整するモデルB、例えば収縮期血圧のような心血管因子により調整するモデルCにより仮説を立て検証した。その結果、いずれのモデルでもEPAとDHAの摂取が有意に脳容量、白質、灰白質などの容量や認知機能を向上させる結果は得られなかった。

以上の結果からBenedict C氏らは、「EPAとDHAの摂取は高齢者の認知機能の改善に繋がるかもしれないが、さらに患者の研究などで検証が必要だ」と述べている。本研究では健康な高齢者で検証しており、食事による摂取(低容量)では具体的な数字に繋がらなかったということで、認知機能の低下している人ではどうか、サプリメントのような中濃度のものではどうか、若いうちからのEPAとDHAを摂取する生活習慣が老齢期の認知機能に影響するか、などの疑問はまだ残り、今後の研究が期待される。(Medister 2012年7月17日)