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クラウドファインディングで研究費募る 早期がんの解明に向けて 北大

logo_kariがん研究の新しい形がスタートした。
2015年11月26日、クラウドファンディングサイト「academist」において、北海道大学 遺伝子病制御研究所 分子腫瘍分野 藤田恭之教授が率いる研究チームが、「初期がん細胞が周りの正常細胞によって組織から排除されるという細胞間の“社会性”を応用したがんの治療方法を確立するプロジェクト」の研究費用の公募を開始した。

藤田教授の研究のスタートは、10年前にさかのぼる。藤田恭之教授は2005年頃、正常細胞と発がんタンパク質Ras変異細胞とを混ぜ、この両者の間で何が起こるかを調べていた。するとある時、Ras変異細胞が正常細胞層から管腔側へはじき出されるのを観察した。正常細胞が、隣接するがん細胞を、自ら排除したというのだ。藤田教授は、そのムービーを見た時の興奮を、今でも忘れることができないという。
さらに藤田教授は2009年、「正常細胞に囲まれた初期がん細胞が、正常な組織から排除されること」を、世界で初めて研究結果として公表した。その後の研究により、正常細胞には、様々なタイプのがん細胞を駆逐する能力が存在していることが明らかとなってきた。その一方で、どのような分子がこのがん排除機構に関わっているのか、いまだ解明されていない点も多い。藤田教授は「がん細胞を取り巻く“社会性”を利用した、新しいタイプの予防・治療法を確立したい」と意気込む。分子の機能をコントロールし、がん細胞の排除を促す薬剤の開発も目指すという。
ごく早期のうちにがんが発見できるのは、およそ1年半~2年といわれているが、藤田教授の研究は、これよりも以前、まだがん細胞が検査では発見できない時期に、体の中で起こる変化についての研究といえる。「academist」での希望支援額は50万円。一口3,000円から誰でも支援することができ、オリジナルキャラクター「押しくら細胞」がデザインされたTシャツや白衣、特別講演会参加権、研究日誌などがリターンとして準備されている。
(Medister 2015年12月4日 葛西みゆき)

<参考資料>
academist 正常細胞ががん細胞を駆逐するメカニズムを解明したい!

厚生労働省委託事業 がん検診受診促進企業連携実施本部(がん検診企業アクション) 早期がんを発見できる時間

北海道大学遺伝子病制御研究所分子腫瘍分野 藤田研究室 研究紹介

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