クロムとシステインの補充療法による2型糖尿病患者への効果
クロムは微量元素として体内のあらゆる組織に存在している。様々な食材にも含まれており、通常の食事で不足することは少ないと考えられる。一方、クロムとシステインの補充療法は動物実験ではグルコース代謝を改善することが示されている。そこで、米国LSU健康科学センター小児科のPat Farrington Bass III氏らのグループは、クロムとL-システインの複合体により、2型糖尿病患者において、ランダム化二重盲検プラセボ対象試験を実施し、酸化ストレス、血管の炎症、血糖を低減できるとするCDNC仮説を検証して、学術誌「Molecular Nutrition & Food Research」のオンライン版に掲載(2012年6月6日)された。
2型糖尿病患者は、安定化のため1か月間のプラセボを与えられた後、無作為にプラセボ群(P群)、クロミウム・ピコリン酸群(CP群)、CDNC群の3つのグループに分け、3ヶ月間、経口投与によりサプリメントを投与された。74例が試験終了まで完了し、P群25例、CP群25例、CDNC群24例が研究対象とされた。その結果、CDNC群において、インスリン抵抗性、蛋白質の酸化とTNF-αレベルの減少がみられた。一方、CP群には有意な減少は確認できなかった。血中インスリンレベルもCDNC群で減少がみられ、CP群ではみられなかった。血中HbA1c値やブドウ糖量は有意な影響が確認できなかった。
以上より、Pat Farrington Bass III氏らは、「CDNC補充療法により、2型糖尿病のTNF-αインスリン、酸化ストレスの血中レベルを低下させることにより、インスリン抵抗性を低下させるのだろう。2型糖尿病の治療法としても今後発展の可能性があるだろう」と述べている。
なお、「日本人の食品摂取基準(2010年版)」では、18歳から70歳未満で男性40μg/日、女性30μg/日とされている。また、WHOでは1日250μgを耐用上限量として示唆している。(Medisterニュース 2012年6月11日)