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コーヒーのN-メチルピリジニウムが胃酸分泌を調節する

コーヒーは世界で最も多く飲用されている嗜好飲料であり、当初より眠気対策や疲労回復に活用されており、その他の様々な医学的・薬学的な研究報告が知られている。我が国でも江戸時代に長崎の貿易品として輸入されるようになり、水腫に効果があるものとして重宝されていたようだ。摂取後数分から数時間で効果がみられる急性反応として、眠気防止を含む中枢神経興奮作用、血圧上昇、利尿作用、胃液分泌促進などが知られている。

食品化学ドイツ研究センターのVeronika Somoza氏らは、コーヒーの成分であるクロロゲン酸(CA)、カフェイン(CAFF)、ピロガロール(PYR)、カテコール(CAT)、βN-アルカノイル-ヒドロキシトリプタミド(C5HT)およびN-メチルピリジニウム(N-MP)が分子生物学的にどのように胃酸分泌のメカニズムにその影響を与えるかを検討し、学術誌「Molecular Nutrition & Food Research」に報告(Volume 56, Issue 2, pages 325–335, February 2012)した。

ヒトの胃癌細胞(HGT-1)を用い、実験を行った。また、EGFR、AKT1、ERK1 / 2、ATF-2およびcAMPレベルの活性化のために、パスウェイスクリーニングアッセイを行い、関連遺伝子の発現を測定した。C5HTはソマトスタチン受容体の発現を52%に減少させたのに対し、N-MPは、114%の抗分泌ソマトスタチン受容体の発現を増加させた。N-MPは前駆体分泌CHRM3受容体を36%、H+,K+-ATPaseを36%に発現低下させた。 N-MPとCAは、機能アッセイによりプロトンの分泌を減少させたが、CAFFは分泌活性を刺激した。そして、パスウェイ解析により、CAFF、CA、CAT、C5HT、PYR、ヒスタミン活性化EGF受容体のシグナル伝達経路と、N-MP関連ERK1 / 2シグナル伝達経路を区別することができた。

以上よりVeronika Somoza氏らは、「マルチパラメトリックアプローチにより、N-MPは効果的にヒトの胃壁細胞の胃酸分泌のメカニズムを低下させることが示された。」と述べている。これまで現象として臨床的に得られてきた知見ではあるが、その分子的背景が明確になることで、コーヒーの新たな利用方法の開発に繋がるかもしれない。(Medister 2012年8月7日)

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