タトゥーのインクがM. chelonae感染症アウトブレークを引き起こした
大阪市では、2012年5月に市教委所管の教職員を除く約3万3500人を対象に入れ墨の有無についての調査を実施したところ、7月30日現在、114人が「ある」という申告をした。0.34%ほどであり、成人の1000人中3人から4人の計算になる。一方、米国の皮膚科学会(JAAD)が2006年に発表した報告では、18歳から50歳の被験者において24%が入れ墨を入れており、米国ではファッションとして広く普及している。2012年1月、米国ニューヨークの皮膚科医からの報告に基づいて、ロチェスター大学(米)のMark H. Goldgeier氏らはタトゥー(刺青)に関連するM. chelonaeが皮膚と軟部組織への感染症について、その程度、原因、アウトブレークの伝わり方、将来の予防を目標として調査し、医学誌「N Engl J Med」に報告(2012; 367:1020-1024)した。
Mark H. Goldgeier氏らは患者との構造化された面接、皮膚生検標本の病理組織学的検査、抗酸菌塗抹、微生物培養、抗菌薬感受性試験、DNAシークエンシング、パルスフィールド•ゲル電気泳動(PFGE)、インクや製造及び包装に使用される素材、タトゥーパーラーの蛇口や水の評価、インクメーカーの調査を行った。
患者の平均年齢は35歳(18歳~48歳)で、17例から得られた皮膚生検標本は17例すべてで異常を示し、14例で、M. chelonaeが検出され、DNAシークエンシングで確かめられた。PAGE解析により、患者から分離した11株と、未開封のインクボトル1個で、同一のパターンを検出した。19例中18例で、適切な抗生剤で治療し、状態の改善がみられた。M. chelonaeは非結核性抗酸菌で、水道水で増殖して検出される常在菌であり、通常健康な状態で免疫力があれば治療は必要ないと考えられるが、タトゥーにより皮膚に刺激や傷が生じたため、菌が活性化したと考えられる。
以上の結果、混合インクがこのアウトブレークの共通の感染源であった。すでにインクメーカーはリコールし、回収しているという。(Medister 2012年9月14日)
いれずみの文化誌