トランス脂肪酸含有量の法的規制の効果
トランス脂肪酸は、マーガリンやバターなどにも含まれ、天然の植物油にはあまり含まれず、水素を付加した部分硬化油を製造する過程で発生する。トランス脂肪酸の摂取は、LDLコレステロールを増加させ、冠状動脈性心臓病のリスクを増加させるとされている。これらの科学的知見を受け、 2006年にニューヨーク(NY)市はレストランでのトランス脂肪酸の使用を制限する米国内初の条例を可決した。
NY市健康精神衛生課のLynn D. Silver氏らは、ファーストフード購入によるトランスおよび飽和脂肪酸含有量を指標に、NY市の規制の効果を評価し、医学誌「Ann Intern Med.」に報告(17 July 2012;157(2):81-86)した。
Lynn D. Silver氏らは、11ファストフードチェーン168ヶ所のランダムに選択されたNY市内の店舗において、2007年から2009年のランチタイムに店舗に訪れた客にインタビューし、規制実施前後の利用可能な栄養情報と購入領収書を含む概略調査について横断的研究を行った。2007年の6969例の購入者、2009年の7885例の購入者からデータを回収した。全体では、1購入あたりのトランス脂肪酸量は2.4gの減少が確認されたのに対し、飽和脂肪酸量はわずか0.55gの増加であった。1000 kcalあたりのトランス脂肪酸量は、1000 kcalあたり2.7gに減少した。トランス脂肪酸を含まない商品の購入率は、32%から59%に上昇した。
以上よりLynn D. Silver氏らは、「レストラン規制の導入により、飽和脂肪酸の増量などの影響はなく、トランス脂肪酸の減少に有意に効果が検証された。この効果は、地域の貧困層、富裕層にかかわりなく効果が見られた。今後の課題として、産業用トランス脂肪酸の利用に関しても規制が必要ではないか。」と述べている。日本での法的規制はまだ無いが、一部の小売企業では取扱をしない方針を表明している。一方で、もともと日本人の平均摂取量が低いため、大きな問題でないという主張もあり、意見がわかれている。(Medister 2012年8月2日)