トリプルネガティブの乳癌患者は、低脂肪食による体重減少を
女性ホルモンに関係しない乳癌の場合、低脂肪の食事を続けることで死亡率が下がることが分かった。2014年12月、アメリカで開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウム2014において、「女性の介入栄養研究(WINS)」の結果として公表された。
乳癌にはいくつかの種類がある。中でもトリプルネガティブと呼ばれるタイプは、エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体・HER2の3つが腫瘍細胞に発現していないため、乳癌治療に対して有効性の高いホルモン療法や、抗HER2療法の効果が期待できない。化学療法や分子標的薬による治療法も研究されているが、一般的には予後が悪いタイプであるとされている。乳癌患者全体のうちおよそ10~15%ほどだが、術後2~3年で再発するなどの面も併せ持っている。
今回公表された研究結果によると、アメリカ国内の39の医療機関で標準的な乳癌治療を受けている初期の乳癌患者2,400人を対象とし、乳癌の診断から5年間、低脂肪食を摂る群(介入群)と、通常通りの食生活を送る群とに分け、その死亡率を比較した。両群を15年後まで追跡した結果、女性ホルモンに関係しないタイプその結果、女性ホルモンに関連しない乳癌では再発率が24%減少した。さらにエストロゲン受容体陰性の乳癌患者では、死亡率が36%減少した。
この研究の当初の目的は、栄養摂取の妥当性を維持しながら、5年間に渡って脂肪の摂取量を下げることにあった。介入群の乳癌患者は、栄養士による指導の下、脂肪摂取量の目標値を設定し、低脂肪の食事計画を実施した。すると介入群では脂肪の摂取量が9.2%低下し、体重はおよそ6ポンド(およそ2.7kg)低下した。これが結果的に、乳癌による死亡率を現象させたことが示唆された。
研究者たちは「トリプルネガティブ乳癌の女性たちに対して低脂肪性の食事をとるよう生活習慣介入を行ったが、脂肪摂取量によるカロリー制限よりも、体重減少に結びついたことが、実質的に生存の可能性を高めることにつながったのだろう」と述べている。
(Medister 2015年1月9日 葛西みゆき)
文献情報
Chlebowski R et al. Lowering Dietary Fat Intake Reduces Death Rates in Some Women With Breast Cancer. AACR. 2014 Dec 12.