ナマコのセレブロシドはオロト酸誘発性脂肪肝を軽減する
ナマコ(海鼠)は棘皮動物門に属する無脊椎動物の一種で、日本や中国では食材として1000年以上の歴史が文献などにも残っている。古来より体内の虫殺し、肝臓への薬効、痰の除去などに効果があると言い伝えられ、漢方薬としても滋養強壮薬、皮膚病薬として用いられてきた。
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、先進国で流行し、慢性肝疾患だ。中国海洋大学のYuming Wang氏らは、脂肪肝ラットにおいてナマコの一種であるイモナマコモドキから抽出されたスフィンゴ糖脂質のナマコセレブロシド(SCC)の予防効果を検証し、学術誌「Lipids Health Dis.」に報告(2012 May 8;11(1):48)した。
ラットは、コントロール群、NAFLDモデル群、0.006%SCC投与群、 0.03% SCC投与群の4群に分け、各動物群には1%オロト酸(OA)を投与して脂肪肝モデルとした。血清と肝脂肪量、血清のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)とアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)活性を測定した。また、メカニズムを探るため、肝臓の脂質代謝関連酵素や遺伝子発現の変化を測定した。
その結果、SCC投与群においてラットの肝脂質の蓄積が改善され、OA-投与ラットにおいて血清トリグリセリド(TG)量、ALT、ASTの活性を向上させた。脂肪酸合成酵素 (FAS)、リンゴ酸酵素 (ME)、グルコース6リン酸脱水素酵素 (G6PDH)を含む肝脂質合成酵素の活性は、SCC投与群において抑制された。また、これらの遺伝子発現も抑制された。また、SCCの投与はカルニチンパルミトイル転移酵素の活性と発現には影響せず、ミクロソームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)活性の抑制がみられた。
以上より、ラットにおいて、SCCにより肝脂質合成遺伝子発現と酵素活性の抑制と、肝臓においてTG分泌を促すことにより脂肪肝を改善することが示唆された。ヒトでの効果については今後の検証が必要であるが、伝統食材として古来より体感し、言い伝えられている効果の一部が説明付けられるかもしれない。(Medisterニュース 2012年6月14日)