ビタミンEは骨を減らす
骨代謝は骨芽細胞による骨形成と、破骨細胞による骨吸収のバランスにより調整されている。破骨細胞は多核細胞として知られ、単核の破骨前駆細胞が融合することにより形成される。ビタミンDを始めとした脂溶性ビタミンは、骨格の形成において重要であると知られているが、これまでビタミンE(α-トコフェロール)の骨再形成における役割は知られていなかった。
慶應義塾大学医学部 内科学教室 腎臓内分泌代謝内科の竹田秀特任准教授らは、α-トコフェロール輸送蛋白質(Ttpa)の遺伝子欠損マウスをビタミンE欠乏のモデルマウスとして用いたところ、骨吸収が減少して、骨量が高まることを見出した。
また、細胞実験により、α-トコフェロールは抗酸化作用とは関係なく破骨細胞の融合を促進し、破骨細胞の融合において必要不可欠な樹状細胞特異的膜貫通蛋白質の発現を、MAPキナーゼ14(p38)とmicrophthalmia-associated transcription factorの活性化を通して、DC-STAMP遺伝子のTm7sf4プロモーター上への直接的な取り込みにより誘導することを示した。
細胞実験の結果は、α-トコフェロール輸送蛋白質(Ttpa)の遺伝子欠損マウスにTm7sf4を過剰発現させることによりレスキューされたことで、生体内でも証明された。
そして竹田氏らは、野生型マウスおよびラットに、一般的な人々が摂取するサプリメントに含まれるα-トコフェロールに相当する量を摂取させると、骨量が減少することを示した。
これらの結果は、米国科学誌「Nature Medicine」オンライン版に掲載(2012 年3 月4 日)された。竹田氏らは、これらの結果から、血清中のビタミンEは破骨細胞の融合を調節することによって骨量を調節する機能があることを証明したと述べている。
我が国では、75歳以上の女性の約半数は骨粗鬆症であると言われ、今後高齢化社会のなかで1300万人に達するとの見方もあり、病態解明が求められている。一方、ビタミンEはアンチエイジング素材として、抗酸化作用が注目されており、様々なサプリメントに配合されている。今後は本研究も踏まえ、過剰摂取によるマイナスの側面も研究し、認知する必要がある。(Medisterニュース2012/5/3)