ボトックスは皮膚のコラーゲン産生をコントロールする
美容外科領域において筋弛緩作用を応用した皮内注射による「皺取り」や「輪郭補正(エラ取り)」などの顔リフティング効果の目的で使用されていることが多く、日本国内においても2009年にアラガン・ジャパン株式会社から医療用医薬品として「ボトックスビスタ」という商品名で発売されている。
忠南(チュンナム)大学(韓国)のCho BC氏らは、ヒト線維芽細胞におけるボツリヌス毒素Aの効果を検証し、医学誌「Dermatol Surg.」のオンライン版に報告(2012年6月28日)した。
ヒト線維芽細胞の増殖能に関しては、ボツリヌス毒素Aは効果を及ぼさなかった。コラーゲン産生に対する効果を検討するために、プロコラーゲンI型C末端ペプチド(PIP)を酵素免疫測定法を用いて測定し、コラーゲン産生はウェスタンブロッティングで測定し、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)産生をゼラチンザイモグラフィーで測定したところ、PIP量はボツリヌス毒素A存在下で有意に増加し、I型コラーゲンの発現量も増加、コラーゲン分解を抑制するMMP量の減少が確認された。
以上の結果からCho BC氏らは、「ボツリヌス毒素Aはヒトの皮膚の線維芽細胞においてコラーゲン産生と分解にin vitroで効果があることが示された。この研究により、加齢した皮膚の真皮組織のリモデリングにおいて、皮下ボツリヌス毒素A注射の実験的な背景を提供できた。」と述べている。これまでは筋弛緩作用による説明が中心であったが、コラーゲンなど皮下組織の質を高める可能性が示唆され、今後のin vivoでの検証も期待される。(Medister 2012年7月4日)