マンモグラフィの是非が問われるか 乳癌検診に対する25年の追跡調査より
2014年2月11日付けのイギリスの医学雑誌BMJにおいて、「Twenty five year follow-up for breast cancer incidence and mortality of the Canadian National Breast Screening Study: randomised screening trial」という論文が発表された。カナダにおいて、乳癌検診にマンモグラフィ検査を行う効果について25年の追跡調査を行った研究結果である。この研究では、年齢40歳から59歳の女性89,835人を、5年ごとにマンモグラフィ検査を行う群(n=44,925)と、行わない群(以下、コントロール群、n=44,910)とにランダムに振り分け、マンモグラフィ検査がその死亡率の減少に寄与するかどうかについて、25年に渡る追跡調査を行った。
結果として、5年ごとにマンモグラフィを行う群では3,250人が乳癌と診断され、500人が乳癌で死亡している。一方のコントロール群では3,133人が乳癌と診断され、505人が乳癌で死亡している。マンモグラフィ検査を行うことによる明らかな乳癌による死亡率の減少はみられなかったのだ。研究では、40歳~49歳までの群と50歳~59歳までの群でも有意差は認められず、また診断時の乳癌の大きさにも有意差が認められなかったとしている。
現在の日本における乳癌検診においけるマンモグラフィは、40歳以上の女性に対して、さらに触診法と併用することが推奨されている。少し古いが厚生労働省が2004年に公表した資料では「視触診単独によるがんの発見率は0.11%、マンモグラフィ併用によるがんの発見率は0.19%」となっており、わずかではあるがマンモグラフィを併用した方が発見率向上につながるため、これを推奨した指針となっている。
しかし今回の研究結果をみると、そこに有意差は無かったことになる。人種的な問題があるのか、治療法の進歩によるものなのか、発見率と死亡率という論点が違うのか。現在の日本の乳癌検診のガイドラインは厚生労働省からの指針に基づいたものではある。しかし10年前の統計結果による指針が元になっているのだとすれば、その後の治療法(抗癌剤治療など)の進歩を考慮すると、そろそろ日本における検診方法の見直しが検討される時期に来ているのかもしれない。
(Medister 2014年2月28日 葛西みゆき)
科学的根拠に基づく乳癌診療ガイドライン 1治療編 2013年版