リコピンは、初期の細胞活性化に依存してリンパ球の増殖を抑制する
トマトはメタボ対策や抗加齢対策、美容など、健康志向のなかで見直されている野菜の一つだ。そのトマトの艶やかな赤色の主成分が、リコピンだ。カロテノイドの生合成における重要な中間体であり、不溶性のテトラテルペンである。疫学的に、これまでの研究のなかでリコピンは心保護作用があることが知られていた。動脈壁でのT細胞の取り込みと活性化はアテローム発生時に重要なプロセスだが、T細胞応答におけるリコピンの効果は不明であった。そこで、アバディーン大学(英)のFrank Thies氏らは、リコピンがT細胞の機能と活性化を調節することができるかを検証し、学術誌「Mol Nutr Food Res.」に報告(2012 Jul;56(7):1034-42.)した。
Frank Thies氏らは、16人の健康な成人から、リンパ球・単球から成る末梢血単核細胞を採取して、リコピンを含むリポソーム(0–2.9 μg リポソーム/mL)の存在下で培養した。フローサイトメトリーにより、CD69 (初期細胞活性化マーカー)、CD25 (IL-2受容体)、CD11a (後期活性化マーカー)の発現量と、細胞周期を、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T-細胞において測定した。IL-2の分泌と細胞増殖は、ELISA法と[3H] – チミジンの取り込みによって決定された。その結果、リコピンは活性化された細胞で、リンパ球増殖(最大40%)を大きく抑制した。また、リコピンはCD69の発現(最大12%)とIL-2分泌(最大29%)を有意に阻害し、一方で、CD25とCD11aの発現と細胞周期のプロファイルは、リコピンの影響を受けなかった。よって、リコピンは、初期細胞活性化に寄与してリンパ球の増殖に影響を与えていることが示された。
Frank Thies氏らは「トマトによる食事療法が心血管疾患に対して有効であることを説明できる。」と述べている。日々の食事にトマトを取り入れることで、心血管疾患リスクを低下させられるかもしれないので、心当たりのある方は心がけて摂取してみてはいかがだろう。(Medister 2012年7月11日)