レスベラトロールは血管平滑筋細胞の老化を防ぐ
レスベラトロール(3,5,4′-trihydroxystilbene)は赤ワインに含まれるポリフェノールの一種で、心血管関連疾患の予防効果を中心に、酵母、線虫、ショウジョウバエからマウスまで、様々な生物種で寿命を伸ばすことが知られている。ヒトにおいても、血圧が高めの被験者において、血管拡張反応を改善し、動脈硬化を防ぐこと、健常者では乳がんや肺がんのリスクを低減する可能性が示唆されている。
血管平滑筋は収縮、弛緩によって血管径の調節を行っており、血管の断面の円周方向に配列している。血管平滑筋細胞(VSMC)の老化をアンジオテンシンII(Ang II)が促進することが報告されているが、レスベラトロールの効果は不明であった。そこで、九州大学大学院医学研究院循環器内科学の砂川賢ニ教授らは、レスベラトロールがVSMCのAng II誘導性の老化を減衰できるかを検討して、医学誌「Regul Pept.」のオンライン版に掲載(2012年5月2日:筆頭著者は九州大学大学院医学研究院先端心血管治療学講座 市来俊弘教授)された。
砂川教授らは、β-ガラクトシダーゼ(SAβ-Gal)アッセイにより、VSMCのAng IIが老化を誘導することを指標とした。Ang II誘導性の老化は、PD123319(Ang IIタイプ2受容体拮抗薬)ではなく、ロサルタン(Ang IIタイプ1受容体(AT1R)拮抗薬)で抑制されたことから、AT1RがVSMCの老化を促進することが示された。そして、レスベラトロールはVSMC のAng II誘導性老化を濃度依存的に抑制した。
更にレスベラトロールは、Ang II依存的なp53とp21の誘導を抑制した。p53は老化の誘導に重要な働きをしており、p21はp53の下流の標的遺伝子だ。よって、レスベラトロールはp53/p21のAT1R依存的誘導の阻害を介してVSMCの老化を抑制すると考えられる。砂川教授らは、「レスベラトロールによりp53が抑制され長寿となる」と述べている。(Medisterニュース2012/5/18)