中国の薬剤耐性結核菌に関する全国調査
中国政府・衛生部は2011年3月の「全国第5回結核流行病学現場調査結果」では、活動性結核患者が500万人以上、結核菌感染者全体では5億人(総人口の45%)と発表しており、未だ結核に対し整備ができていない現状が伺える。
中国疾病管理予防センターのYu Wang氏らは、2007年に中国の薬剤耐性結核菌に関する全国調査を行い、その結果を医学誌「N Engl J Med」に報告(2012; 366:2161-2170)した。
Yu Wang氏らは、公衆衛生システムの結核症例のサンプリングと抗結核薬の第一選択薬であるイソニアジド、リファンピン、エタンブトール、ストレプトマイシンと第二選択薬であるオフロキサシン、カナマイシンに対する抵抗性をテストするクラスターランダム化比較試験を行い、中国における薬剤耐性結核菌の割合を見積もった。
3037例の新しい症例と、892例の以前治療された症例をデータとしたところ、新しい症例では5.7%、以前の症例では25.6%で多剤耐性(MDR)結核だった。全結核患者の内、4分の1はイソニアジド、リファンピン、またはその両方に耐性で、10分の1はMDR結核菌を持っていた。MDR結核患者の約8%が広範囲薬剤耐性(XDR)結核(少なくともイソニアジド、リファンピン、オフロキサシン、カナマイシンに耐性をもつ結核と定義)だった。2007年には、MDR結核症例数は11万例、XDR結核症例数は8200例と見積もられた。最期の治療を結核病院で受けた治療歴のある患者が最もMDR結核のリスクが高かった。以前に治療された226人のMDR結核患者のうち、43.8%は最期の治療が完了していなかった(ほとんど病院システムだった)。
中国のMDR結核は公衆衛生システムや病院(特に結核病院)での不十分な治療が原因の一つと言えそうだ。(Medisterニュース 2012年6月8日)