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乳がん患者の脱毛の実態が明らかに 専門医らによるアンケート調査より

4c9d0daf6101a51b1340ad1e4c8de8f3_s乳がんで抗がん剤治療を受けた女性のうち、90%以上の人が副作用の1つである「脱毛」を経験し、さらに、およそ6人に1人が、がん治療終了から3年以上経過しても、頭髪の回復が半分以下と回答していることが分かった。専門医らのグループによる、患者アンケート調査により明らかとなった。

このアンケート調査は、2013年に全国47の医療機関において、乳がんの手術および標準的な抗がん剤治療を受けた女性を対象に実施された。回収したアンケートのうち、抗がん剤治療が終わってから5年以内の1478人(平均年齢54.7歳)の回答を分析したところ、抗がん剤の副作用で髪の「全て」または「8~9割」が抜けたと回答した人は、94%にのぼっていた。
さらに、治療終了後の頭髪の回復について調査し、無回答を除く1267人の回答について分析を行った結果、80%以上回復した人の割合は、治療終了後1年未満で53%、1年以上3年未満で64%、3年以上で62%だった。年数の経過と頭髪の回復レベルには相関がみられず、3年以上が経過しても50%以下の回復率だったのは16%にのぼっている(およそ6人に1人の割合)。
脱毛は、化学療法開始後18日程度で始まり、化学療法終了後3ヶ月程度で新たな発毛がみられているが、脱毛期間中にウィッグ(かつら)を毎日使用した人は55%であり、平均的な使用期間は12.5(±9.7)ヶ月と、長期に使用している人が多くみられた。

かつて行われた諸外国での調査によると、化学療法を受けたがん患者の苦痛の順位として、「脱毛」を挙げる人が多い。1983年の調査では3位、1993年の調査では1位、1996年および2000年の調査では2位となっている。今回、日本での大規模な実態調査が初めて行われたこととなるが、調査に携わった埼玉医大総合医療センターの矢形寛教授は、調査結果レポートの中で「化学療法による頭髪への影響は一時的なものとは限らず,医療者は適切な情報提供と長期的に渡るサポートを考えていく必要がある」とコメントしている。
(Medister 2015年9月29日 葛西みゆき)

<参考資料>
乳癌化学療法レジメン別にみた頭髪の長期的回復 – 全国アンケート調査から

乳癌補助化学療法における脱毛の実態に関する多施設アンケート調査-CSP-HOR化学療法に伴う脱毛患者サポートに関するワーキンググループ –

乳がん―治療・検査・療養 (国立がん研究センターのがんの本)
乳がん―治療・検査・療養 (国立がん研究センターのがんの本)