嚢胞性線維症の乳幼児は高張食塩水を吸入しても改善しない
嚢胞性線維症(Cystic Fibrosis:CF)は、常染色体劣性遺伝の遺伝性疾患で、全身の外分泌腺(肺、膵臓、消化管、汗腺)の機能不全から。気管支拡張症をきたす。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症や肝機能障害を併発することもある。白人に多く2500人に1人と言われ、日本人では100人前後の患者がいると見られる。
6歳以上のCF患者の治療薬として、高張食塩水の吸入が推奨されているが、6歳未満のCF患者で評価されていなかった。ノースカロライナ大学チャペルヒル校のStephanie D. Davis氏らは、高張食塩水は6歳未満のCF患者の肺疾患の増悪の発現率を減少させるかどうかを検証し、医学誌(JAMA.)に報告(2012;307(21):2269-2277.)した。
Stephanie D. Davis氏らは、2009年4月から2011年10月に米国およびカナダの30ヶ所のCFケアセンターで、嚢胞性線維症での生理食塩水吸入(ISIS)に関する多施設ランダム化プラセボ対象試験を行った。4歳から60歳のCF患者で確定診断がでている344人に適格性が評価され、その内321人は無作為に割付され、29人が早期に試験を中断した。
積極的治療群(n =158)は7%高張食塩水を、対照群(n= 163)は0.9%等張食塩水を48週1日2回噴霧した。両グループは各試験の前に気管支拡張剤アルブテロールもしくはレバルブテロールを投与された。48週間、経口、吸入、または抗生物質を静脈内投与して、治療プロトコルとして定義された肺疾患の増悪率を検証した。
平均肺増悪率(イベント/人・年)は、コントロール群と積極的治療群では調整比率で0.98 (95% CI, 0.84-1.15)だった。肺疾患が増悪した患者では、肺増悪に対する抗生物質治療日数の平均数は、積極的治療群で60日、コントロール群で52日だった。身長、体重、呼吸数、酸素飽和度、咳、または呼吸器症状スコアなどの副次的エンドポイントに有意差は認められなかった。幼児の肺機能検査は、サブグループ(n = 73、45名の2訪問での検査で許容測定値とした)としての予備的なアウトカムとして行ったが、積極的治療群は38 mLでより良かった0.5秒の努力呼気肺活量の平均変化を除いて、有意差はなかった。有害事象のプロファイルも似通っていて、咳の程度が中程度から重度の症状(積極的治療群で39%、コントロール群で38%)が診られた。
6歳未満の乳幼児の嚢胞性線維症患者の間で、高張食塩水の吸入による肺疾患の増悪率を検討したが、等張食塩水の吸入と比べ有意な改善は見られなかった。(Medisterニュース 2012年6月12日)