国立がん研究センター 2015年の癌罹患数・死病数の予測を公表
2015年4月28日、国立がん研究センター(以下、国がん)は、「2015年のがん罹患数、死亡数予測」を公表した。これによると、癌の罹患数は98万例、死亡数は37万人となり、2014年予測からは、罹患数が約10万例、死亡数が約4千人増加するとしている。
国がんでは、「新たにがんと診断されるがんの数」を「罹患数」と呼んでいる。2015年の予測がん罹患数は、982,100例(男性560,300例、女性421,800例)。部位別にみると、全体では大腸癌、前立腺癌の罹患が増加、男性においては前立腺が最多となっている。女性では1位が乳癌、2位が大腸癌で2014年の予測と変わらないが、肺癌が胃癌を抜いて3位となっている。
その要因には、「高齢化」と「がん登録精度の向上」があると考えられている。特に男性の前立腺癌では、PSA検診の普及が要因としてあがっている。
癌による死亡数は全体で370,900人(男性219,200人、女性151,700人)。部位別にみると、全体では大腸が胃癌を抜いて2位となったが、肺癌が1位であることには変わりが無かった。その差はおよそ26,600人。男女別での順位変動はなく2014年の予測と同様の傾向だった。
大腸癌・肺癌の罹患数の増加は、高齢化の影響が高いと考えられている。さらに胃癌も、高齢化の影響を除くと罹患数・死亡数は減少傾向になるが、高齢化の影響を加味すると増加または横ばいとなる。これは他の増加が上回るため、順位が下がっているに過ぎない。
国がんでは、予測には誤差が伴うこと、また検診の動向などによって変動があり得ることを注意点としてあげている。特に前立腺癌の罹患では、罹患数の変動が見込まれている。
PSA検診の普及により、これまでは分からなかった前立腺癌が、50歳代などの比較的若い年代での発見例や、より早期の内に発見できる可能性が高くなるためだ。2009年にはすでに64%の自治体で、自主的に行われていたPSA検診。今後さらなる普及で、前立腺癌罹患数の増加や、死亡者数減少効果がみられるのか、その動向に注目したい。
(Medister 2015年5月7日 葛西みゆき)
<参考資料>
国立がんセンター 2015年のがん罹患数、死亡数予測
厚生労働省 平成21年 市区町村におけるがん検診の実施状況等調査結果
がんの予防―科学的根拠にもとづいて (国立がん研究センターのがんの本)