多発性骨髄腫における移植後レナリドミド維持療法の効果
多発性骨髄腫は、我が国では人口10万人あたり男性2.2人、女性1.7人と言われている(がんの統計2009)。血液癌の一種であり、骨髄で腫瘍性形質細胞が増殖し、異常γグロブリンを産生することにより、高カルシウム血症、腎不全、貧血、骨の損傷などの多様な徴候が発生する。
多発性骨髄腫の標準的治療法として、自家幹細胞移植を伴う高濃度の化学療法が知られる。移植後もほとんどの場合に残存病変があり、再発リスクがある。レナリドミドは、サリドマイド誘導体の一種であり、再発もしくは難治性の多発性骨髄腫に使用される。ルパン病院(フランス)のHarousseau JL氏らは、第3相プラセボ対照試験において、移植後のレナリドミド維持療法の有効性を検討し、医学誌「N Engl J Med.」に報告(2012 May 10;366(19):1782-91.)した。
Harousseau JL氏らは、最初の移植後、非進行性病変の65歳以下の患者614人に対し、レナリドミド投与(当初3ヶ月間10mg/日、忍容性が認められる場合は15mgに増加)と再発までのプラセボ投与を伴う維持療法を、検討した。プライマリーエンドポイントは無増悪生存期間として検討した。
レナリドミド維持療法は、無増悪生存期間の中央値がプラセボ群の23ヶ月から、41ヶ月(ハザード比 0.50; P<0.001)に改善した。45ヶ月の追跡期間の中央値に関して、両群の70%以上の患者は4年生存した。グレード3または4の末梢神経障害の発生率は両群で同等だった。二次原発癌の発生率は、プラセボ群では100患者・年あたり1.2、レナリドミド群では100患者・年あたり3.1だった(P=0.002)。イベントフリー生存期間中央値(二次原発癌が含まれていたイベントで)は、プラセボ群で23ヶ月から、レナリドミド群で40ヶ月(P <0.001)に大きく改善された。
以上にように、多発性骨髄腫の患者における移植後のレナリドミド維持療法により、無増悪かつイベントフリー生存率を大きく改善させた。米国では2006年に食品医薬品局(FDA)に認可されており、我が国では2010年7月より多発性骨髄腫の薬剤として発売されている。(Medisterニュース 2012/5/16)