大腸ガンを引き起こす細菌
私たちの腸内には何百兆もの細菌がいると言われている。これらの細菌は腸内細胞や免疫機構と共存し生きているのだ。腸内環境が崩れるといわれているのはこれらのバランスが崩れるというふうに言い換えることができる。通常、大腸疾患の大部分は腸炎であるが慢性的に腸炎を発症すると大腸ガンになるリスクも高いといえる。
では、腸内環境のバランスを崩さないようにするにはどうしたら良いのか。また腸炎から大腸ガンまでを発症させる危険因子となりうる腸内細菌とはいったいなんなのだろうか。その研究はJanelle C. Arthur 氏が行っており学術論文誌Science に掲載された。研究に用いられたのは腸炎モデルマウスで、このマウスは慢性的に腸炎を発症もらう必要があるので坑炎症性サイトカインのIL-10が産生されない形になっている。坑炎症性サイトカインが産生されないので生後20週齢すると腸炎モデルマウスは100%腸炎を発症する。
このマウスの腸内環境を正常マウスの腸内環境と比べてみると驚くべきことが分かった。腸炎モデルマウスは正常マウスに比べて腸内環境が悪いということは予想がついたが、腸炎モデルマウスの腸内では細菌が減りエンテロバクター科の細菌が割合を高めていたのだ。エンテロバクター科のなかには腸炎や大腸ガンに関与しているといわれている大腸菌も含まれており正常マウスの100倍まで増殖したのだ。
大腸菌が大腸ガンに関与するということを明確にするために腸内細菌が存在しない無菌腸炎マウスを用意し腸内に大腸菌とフェカリース菌を感染させた。どちらも腸炎は発症したがガン化したのは大腸菌のほうだけであった。
この大腸菌が腸炎状態の大腸をガン化まで進行させるということは全ての大腸ガンに言えることではない。日常生活において様々な危険因子が私たちの身の回りにはあり、どれにも発ガン性物質は含まれているのかもしれないのだ。それに私たちの体内にもガン細胞が存在し誰でもいつでもガンになるリスクはあると言うことを再確認していただきたい。
(Medister 桐生賢汰 2013年4月23日)
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