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将来の肝臓癌を予防するために B型肝炎ワクチンの効果を検証

detail12014年12月30日、中国科学アカデミーのがん研究グループによる、B型肝炎ワクチンによる肝臓癌発症予防効果に関する研究成果が、オンライン科学誌PLos Oneにて公表された。中国では、肝臓癌などの肝臓病発症率が高い地域に対し、1983年から1990年の期間、B型肝炎ワクチンの接種を推奨してきた。この研究では、30年間にわたる長期検討結果を公表している。この論文によると、B型肝炎ワクチンを接種することで、肝臓癌の発症を84%、肝臓病による死亡率を70%、子どもの劇症肝炎の発症を69%減少させたという。また、幼少期にワクチンを接種すると免疫の獲得が7割近くあったのに対し、10~14歳まで成長して接種した場合は、2割程度にとどまったという。今回は比較的若い世代での肝臓癌を対象に調査を行っているが、確実に免疫が獲得できているならば、その後も効果は持続する可能性がある。

B型肝炎は、C型肝炎とともに、肝臓癌発症の大きなリスクとなる。B型肝炎ウイルスに感染していても、自覚症状がないまま慢性肝炎となることもあるが、この場合は、やがて肝硬変を発症し、数年~数十年後には肝臓癌を発症するリスクが非常に高い。一方で、自覚症状がない無症候性キャリアが感染源となり、血液や唾液などを経由して、集団感染や家族内感染を起こすケースもあり、日本でもしばしば問題となる。

こういった背景から、日本でもB型肝炎ワクチンの定期接種化が検討されている。2015年1月9日に行われた厚生労働省の専門部会では、諸外国でのワクチン接種状況、ワクチンによる免疫獲得の状況などを元に、定期接種化の具体案についての検討が行われた。その中では、予防接種対象年齢は出生後から生後1年までの間にワクチン接種を行うことなどの案が示された。

長期的にみれば、B型感染を幼少期から予防しておくことで、将来的に肝臓癌を発症する確率を低減できるといわれている。現在は任意接種となっているB型肝炎ワクチンだが、早ければ2016年度から定期接種化される方針だ。
(Medister 2015年1月14日 葛西みゆき)

<参考文献>
厚生労働省 第12回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会資料
資料1 B型肝炎ワクチンの技術的検討の経緯
資料2 B型肝炎ワクチンの接種対象者及び接種方法について

B型肝炎の診療を極める―基本から最前線まで (Hepatology Practice)
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