小児発症の炎症性腸疾患はアテローム性動脈硬化症の危険因子となる
炎症性腸疾患(IBD)は主として消化管に原因不明の炎症をおこす慢性疾患であり、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)が知られる。いずれも厚生労働省の特定疾患に指定される。CDは、10~30歳にみられ、中高年での発症はほとんどないのが特徴で、経口避妊薬の常用、喫煙、受動喫煙、ストレスなどが危険因子として考えられる。UCは、10~30歳に加え中高年にもみられ国内に10万人以上の患者数がいるとされる。
ローマ・ラ・サピエンツァ大学のCucchiara S氏らは、小児のIBD患者の内膜中膜複合体厚(IMT)値の増加とFMD値の低下に基づく早期の血管内皮機能障害発症リスクを検証し、早期のアテローム性動脈硬化を判定する危険因子を評価し、医学誌「J Pediatr.」のオンライン版に報告(2012 May 10.)した。
Cucchiara S氏らは、CD患者27例、UC患者25例(平均年齢15.2歳、疾患の平均持続期間48.05ヶ月)と31例の対照群に対し試験を行った。人口統計データ、アテローム性動脈硬化症の危険因子、UCおよびDCの活動指標の各データを検証した。頸動脈のIMT及び上腕動脈のFMD値を評価した。対照群と比較して、CDの患者では受動喫煙に曝されている例が有意に高く、低BMI、低い高比重リポ蛋白コレステロール値がみられた。IMTがは対照群より有意に高く、FMD値はCDやUCの患者で有意に低い値となった。多変量解析により、IBDは、アテローム性動脈硬化の独立した危険因子であることが判った。
以上より、早期の内皮機能障害は、小児のIBDで発症することが明らかとなった。Cucchiara S氏らは、「小児の内皮機能障害への対処は、心血管疾患の予防戦略につながる、小児IBDの管理における新たな課題だ。」と述べている。(Medister 2012年5月15日)
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