小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの診断のためのCD203c好塩基球活性化試験
小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)は、小麦の摂取と運動の組み合わせによって誘導される小麦アレルギーだ。これまでに、一般的なWDEIA患者の主要なアレルゲンとして、穀物の胚乳から生成されるグルテンの成分である小麦ω-5グリアジンが同定されている。近年、加水分解小麦タンパク質(HWP)に起因する新しいWDEIA(HWP-WDEIA)の発生率が上昇している。HWP-WDEIA 患者は、HWPを含む洗顔石鹸を使用しての経皮経路、鼻粘膜の経路、または両方を介してHWPに感作する。WDEIAの患者はスキンプリックテスト(SPT)でHWP陽性反応を示し、血清中にHWP-特異的IgEが検出される。HWPを含んだ洗顔石鹸によるWDEIA患者は、従来のWDEIA(CO-WDEIA)の患者とは異なり、顔の血管性浮腫が診られる。日本アレルギー学会「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」は5月28日に、「茶のしずく石鹸」の旧製品による小麦アレルギーを発症した患者数を463人(5月10日時点)と発表している。
島根大学医学部皮膚科学教室の森田栄伸教授らは、HWP-WDEIA患者のアレルゲンを特定する方法として、新たなマーカーとなる蛋白質を発見し、医学誌「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」に報告(Volume 129, Issue 5 , Pages 1404-1406, May 2012)した。
森田教授らは、5人のWDEIA患者と、5人のHWP-WDEIA患者で検討を行った。
好塩基球上のCD203cの発現を測定し、HWP-WDEIAにおいてHWPを含んだ洗顔石鹸に含まれる成分の一つであるHWP-Aの濃度依存的に増加することがわかった。CD203cはヒト末梢好塩基球および肥満細胞の細胞膜上に発現し、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼのファミリーに属する細胞外酵素の一つだ。
以上より、HWP内のHWP-Aにより惹起した好塩基球上のCD203cを定量することにより、WDEIA患者において原因となるアレルゲン特定ができ、利用できるだろうと述べている。(Medisterニュース 2012年6月4日)