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市販後調査による長時間作用型のノイラミニダーゼ阻害剤ラニナミビルの安全性

ラニナミビルオクタン酸水和物(ラニナミビル)は単回吸入で治療を完了する長時間作用型のノイラミニダーゼ阻害薬(NAI)だ。抗インフルエンザ薬として日本では2010年10月に第一三共株式会社より「イナビル」として発売された。

博多駅前かしわぎクリニック(博多)の柏木征三郎院長らは、ラニナミビルの2010/2011インフルエンザシーズンにおける薬剤の安全性評価を市販後調査として実施し、医学誌「Int J Antimicrob Agents」のオンライン版に報告(2012 Aug 4.)した。

3542例の患者のうち、副作用は50例(59イベント:発生率1.41%)に認められた。副作用の症状としては、精神疾患(異常行動など:17例0.48%)、胃腸障害(下痢、吐き気など:16例0.45%)や神経系障害(めまいなど:6例0.17%)が報告されたが、重篤な副作用は発生しなかった。発生時期は、52.5%はラニナミビルを吸入した当日に現れ、3日以内に90%の副作用の症例で現れた。これらの副作用は、85%以上の患者で3日以内に改善もしくは解決した。異常行動に関する副作用は、10歳以下の患者では3.1%(959例中30例)、10歳から19歳の患者では0.7%(1008例中8例)、20歳から64歳の患者では0.1%(1431例中2例)、65歳以上では0.0%(64例中0例)であった。また、ラニナミビルは長時間作用型のNAIであるにもかかわらず、副作用の遅延や持続を引き起こす可能性が低いことが確認された。発売前の試験と比べても、副作用の発生率や症状に大きな違いは見られなかった。

以上より、柏木征三郎院長らは、「ラニナミビルオクタン酸水和物は安全性に問題がないことを確認した。」と述べている。また取材に対し、「診療上のポイントとして、ラニナミビルは、オセルタミビルおよびザナミビル(1日2回、5日間投与)と異なり1回で治療が完結することが最大の特徴である。このため、簡便で症状の改善のための治療中断の懸念はない。また、治療効果も他の二剤と同等で副作用もない。小児から高齢者まで吸入可能な患者に使用できる利点がある。他の二剤との使い分けについては、ラニナミビルは1回で治療が完結するため、使用説明書通りの吸入をすることが最も大切である。特に吸入に不安を持つ小児(特に低年齢層)にはより丁寧な吸入指導が必要である。今後の臨床研究における関心にもなるが、インフルエンザ罹患の際の異常行動・言語はインフルエンザ自体によるものか、抗インフルエンザ薬によるものか、明確ではない。本研究は、3000例を超えるインフルエンザ患者に対するラニナミビルの安全性を検討したが、本剤の使用後にも異常言動が認められたが、多いものではなく、本剤との直接の関連があるとは考えられなかった。今後も注意深く検討していきたい。」とのコメントが寄せられた。(Medister 2012年8月24日)