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慢性炎症性脱髄性多発神経炎の治療法の選択

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy :CIDP)は、慢性進行性あるいは階段性、再発性の左右対称性の四肢の遠位、近位筋の筋力低下・感覚障害を主徴とする末梢神経疾患で、末梢神経ミエリンの構成成分に対する自己免疫性疾患だと考えられている。免疫グロブリン静注療法、ステロイド療法などにより臨床症状の改善が試みられている。

 

これら、静脈内免疫グロブリン(IVIG)とコルチコステロイドは、初期の治療として有効であると考えられるが、長期使用における利益と危険性の比較が検討されてなかった。ミラン大学(イタリア)のSabatelli M氏らは、IVIgとコルチコステロイドの一種のメチルプレドニゾロンの6ヶ月間の使用による有効性と忍容性についてランダム化比較試験を行い、医学誌「Lancet Neurol.」のオンライン版に掲載(2012年5月9日)された。

 

Sabatelli M氏らは、多施設、無作為化二重盲検、プラセボ対照、並列グループの研究をCIDP患者に対し行った(EUDRACT:2005-001136-76)。CIDP患者には、IVIG(4日間連続して0·5 g/kg /日)もしくは静脈内メチルプレドニゾロン(4日間連続して250 mLの生理食塩水に0.5 g /日)が6ヶ月間毎月投与された。

 

24例のIVIg群と、21例の静脈内メチルプレドニゾロン群に対し試験を行い、静脈内メチルプレドニゾロン群では11例(52%)、IVIg群では3例(13%)で治療を中止した。中止の理由は、有効性がみられなかった患者(メチルプレドニゾロン群で8例、 IVIg群で3例)、有害事象(メチルプレドニゾロン群で1例)、患者自身の辞退(メチルプレドニゾロン群で2例)だった。6ヶ月の経過観察では、IVIg群で2例の患者がフォローアップ中に死亡した。有害事象の患者の割合はIVIg群とメチルプレドニゾロン群で違いはなかった。

治療中止後、IVIg群(21例中8例)はメチルプレドニゾロン群(10例中0例)よりも病状が悪化し、更なる治療を必要とした。

 

以上より、6ヶ月のCIDPの治療において、IVIg群のほうが、静脈内メチルプレドニゾロンの投与群と比べ治療中止になる機会が少なかった。しかし、Sabatelli M氏らは「長期的な薬剤の効果については今後の更なる研究が必要だ」と述べており、本試験の結果からも分かる通り、治療薬として効果的なケースと増悪するケースもあり、詳細なメカニズムも含めた研究が望まれる。(Medisterニュース 2012年5月22日)