新規抗酸化剤アストラガロシドIVは、グルコース誘導性糸球体上皮細胞のアポトーシスを防ぐ
グルコース誘導性の活性酸素種(ROS)の産生により、糖尿病性腎症(DN)の早期の症状として糸球体上皮細胞のアポトーシスが促される。アストラガロシドIVはサポニンの一種で漢方の黄耆エキスなどにも含まれるが、抗酸化剤として同定されている。
上海交通大学のNiansong Wang氏らは、アストラガロシド IV(AS-IV)について、抗酸化能と糖尿病条件下における糸球体上皮細胞に対する抗アポトーシス効果について検証し、学術誌「PLoS ONE」のオンライン版に報告(2012年6月22日)した。
アポトーシス、蛋白尿、ROS産生、カスパーゼ-3活性と切断能、Bax/Bcl-2 mRNA量とタンパク質の発現量について、in vitroおよびin vivoで測定した。培養糸球体上皮細胞は、24時間AS-IVの50、100および200μg/ mlの高グルコース(HG)条件にさらされた。その結果、AS-IVはHG-誘導性の糸球体上皮細胞のアポトーシスとROS産生を著しく減衰させた。この抗アポトーシス効果は、BaxとBcl-2発現の回復と、カスパーゼ-3活性と過剰発現の抑制と関連していた。
次にin vivoの実験系として、重度の高血糖と尿中アルブミンを示すストレプトゾトシン(STZ)誘導性の糖尿病ラットによりAS-IV の効果を検証した。STZラットでは、Bcl-2発現が減少し、アポトーシス、Bax発現、カスパーゼ-3活性と切断能は増加する。しかし、AS-IVで4週間前処理(2.5、5、10 mg/kg/d)した結果、糸球体上皮細胞のアポトーシス、カスパーゼ-3活性、腎組織病理学、糸球体上皮細胞足突起の消失、蛋白尿、酸化ストレスが改善された。腎臓皮質におけるBax /Bcl-2 のmRNAおよび蛋白質の発現量は、一部AS-IVによって回復した。
以上よりNiansong Wang氏らは、「新規抗酸化剤AS-IVはBax and Bcl-2の発現を調節し、カスペース-3活性を抑制することによりグルコース誘導性の糸球体上皮細胞のアポトーシスを防ぐことができると考えられる。」と述べている。(Medister 2012年6月26日)