日本における腎細胞癌治療薬の検討 ASCO-GU2014より
2014年1月30日から2月1日まで、アメリカ・サンフランシスコにおいて2014Genitourinary Cancers Symposium(ASCO-GU2014)が開催された。参加者数は3,000人を超え、演題数は630、日本からの投稿数は、アメリカ、カナダ、イギリスに次いで4番目であった。
日本人に対する臨床試験からの発表として、国内の多施設無作為化オープンラベルフェーズⅢ試験CROSS-J-RCCの結果が発表された。山形大学の冨田善彦氏による、ポスターセッションでの発表であった。
CROSS-J-RCC試験は、国内39施設において124人が登録され、そのうち評価可能であった120人(スニチニブ群57人、ソラフェニブ群63人)に対して行われた。結果として、PFS中央値ではスニチニブの方が長い傾向にあり、奏効率では有意差はみられなかった。原発巣がcT1かcT2の患者、あるいは診断時に転移がない患者や、favorable risk患者におけるPFS中央値はいずれも、有意にスニチニブ群が長い傾向がみられた。しかし脳腫瘍がある状態では、たとえ安定状態にあったとしても、予後は悪い、という結果となった。
CROSS-J-RCCではスニチニブに対して有意性を見い出せなかったソラフェニブだが、一方でmRCCにはS-1とソラフェニブの併用が有望である可能性を示唆する発表もあった。こちらも日本での臨床試験結果によるもので、長崎大学の酒井英樹氏により発表された。この試験は、化学療法未治療で、1件までのサイトカイン療法を受けたことのある腎明細胞癌、乳頭状腎細胞癌患者、41歳から78歳の21人に対し、S-1とソラフェニブの併用投与を行った。結果として、奏効率52.4%(90%信頼区間:32.8-71.4)、うち完全奏効が1人(4.8%)、部分奏効が10人(47.6%)となり、S-1とソラフェニブの併用は有望であることが示唆された。
日本における腎細胞癌による死亡者数はおよそ4,000人程度(男性2,700人、女性1,300人程度)であり、癌死亡全体では1%程度である。しかし腎細胞癌は腎臓癌全体の70%を占めており、特徴的な症状がなく、多臓器への転移が先に発見されることも少なくない。今後も、分子標的薬の研究も含め、その動向には注目したい。
(Medister 2014年2月5日 葛西みゆき)
腎細胞癌診断・治療ハンドブック―腎細胞癌における分子標的治療薬の役割
参考
日経BP 癌Experts 日本人淡明腎細胞癌へのファーストラインはスニチニブの方がソラフェニブよりもPFSがより長い傾向【ASCO-GU2014】
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/gakkai/sp/asco_gu2014/201402/534888.html
Sunitinib versus sorafenib as first-line therapy for patients with metastatic renal cell carcinoma with favorable or intermediate MSKCC risk factors: A multicenter randomized trial, CROSS-J-RCC.
http://abstracts.asco.org/142/AbstView_142_123627.html
日経BP 癌Experts mRCCにS-1とソラフェニブの併用が有望である可能性【ASCO-GU2014】
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/gakkai/sp/asco_gu2014/201402/534886.html
おくすり110番 テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se42/se4229101.html
慶應義塾大学医学部 泌尿器科学教室 腎細胞癌に対する分子標的治療
http://www.keio-urology.jp/treatment/treatment3.html
がん情報サービス 腎細胞がん
http://ganjoho.jp/public/cancer/renal_cell/index.html