日本のがん生存率の最新全国推計公表
国立研究開発法人国立がん研究センター(略称:国がん)がん対策情報センターを中心とする厚生労働科学研究費補助金「都道府県がん登録データの全国集計と既存がん統計の資料の活用によるがん及びがん診療動向把握の研究」研究班は、「地域がん登録」データを活用しがんの5年相対生存率を算出し、報告書にまとめ公表した。
「地域がん登録」は、都道府県のがん対策を目的に1950年代より一部の県で開始されてきた。研究班が各地域がん登録からデータを収集する活動を開始して以降、年々参加都道府県が増加し、2010年は30県、2011年は40県を経て、2012年診断症例で初めて47全都道府県の登録データが揃ったという。今回の集計対象診断年2006-2008年においては、前回集計の7県から21県に大幅に増加し、地域も東北から九州までが揃った。
2006年-2008年診断症例5年相対生存率集計結果を見ると、まず全部位5年相対生存率は、男性59.1%、女性66.0%、男女計62.1%(前回比は各々+3.7、+3.1、+3.5ポイント)であった。 前回(2003-2005年診断症例)集計の男女計58.6%からわずかに向上していたが、2006-2008年の罹患状況を踏まえると、前立腺がんや乳がんなど予後の良いがんが増えたこと(部位構成の変化、罹患年齢構成の変化)等の影響も考えられ、部位別・進行度別の詳細な分析なしに治療法の改善等が影響しているとは言えない。また、部位別5年相対生存率を見ると、男性では5年相対生存率が比較的高い群(70-100%)には、前立腺、皮膚、甲状腺、膀胱、喉頭、結腸、腎・尿路(膀胱除く)、低い群(0-39%)には、白血病、多発性骨髄腫、食道、肝および肝内胆管、脳・中枢神経系、肺、胆のう・胆管、膵臓が含まれていた。女性では高い群(70-100%)は、甲状腺、皮膚、乳房、子宮体部、喉頭、子宮頸部、直腸、低い群(0-39%)は、脳・中枢神経系、多発性骨髄腫、肝および肝内胆管、胆のう・胆管、膵臓であった。臨床進行度別生存率は、どの部位でも、一様に臨床進行度が高くなるにつれ、生存率が低下していて、多くの部位では早期で診断された場合には生存率が良好であることが分かった。また、年齢階級別生存率は概ね加齢とともに生存率が低くなる傾向が見られたが、若年者より高齢者の生存率が高い部位や、年齢と生存率との相関がはっきりと見られない部位もあった。
生存率においては、全国がん(成人病)センター協議会加盟施設やがん診療連携拠点病院の集計も公表されているが、地域がん登録データより算出される生存率は集計対象を特定施設に限定しない地域代表性を有する値とし、日本の実態を示す全国推計としてがん対策に活用されるものとなることが期待される。
(Medister 2016年8月1日 中立元樹)
<参考資料>
国立がん研究センター 日本のがん生存率の最新全国推計公表 全部位5年相対生存率62.1%(2006-2008年診断症例)