医療NEWS

日本並みのインドの自殺死亡率

WHOの発表では、インド国内で年17万件の自殺が見積もられているが、トロント大学(カナダ)のPrabhat Jha氏らは、より詳細な情報を得るために、2010年の自殺死亡率を定量し、医学誌「The Lancet」に報告(Volume 379, Issue 9834, Pages 2343 – 2351, 23 June 2012)した。

インド内務省統計局は2001年~2003年にかけて、インド全土でランダムに選ばれた6,671地域の1.1百万世帯に対し、死亡率の調査を実施した。調査では、フィールドワーカーが自殺した人の友人や親族から死因や危険因子についての情報を得た。140名の医師のうち2名がランダムに独立して死因を特定した。2010年の国連の調査により、インドの自殺による死亡者数が見積もられていたので、この数値に年齢別、性別の割合を適用した。

15歳以上の死亡例のうち、約3%(95,335例中2,684例)が自殺による死亡であり、2010年のインド全土で男性115,000人、女性72,000人の、合計187,000人に相当する自殺数と見積もられた。人口10万人あたりの自殺者数は、男性26.3、女性17.5となった。15歳以上の自殺において、男性で40%、女性で56%が15歳~29歳の若年層だった。15歳のインド人の80歳までの自殺に至る累積リスクは、男性1.7%、女性1.0%であり、平均1.3%となった。また、南インドは特にリスクが高く、男性3.5%、女性1.8%だった。自殺の死因のうち約半数は農薬の摂取による中毒だった。

以上よりPrabhat Jha氏らは、「インドの自殺死亡率は世界でも最も高い水準であり、特に15歳~29歳の女性が多く、農薬へのアクセス制限などによる公衆衛生上の施策が、自殺率低減に効果があるかもしれない」と述べている。

日本では、警察庁の発表によると、平成21年の自殺者数は32,845人、自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)は25.8であり、20代~30代の若年層の自殺死亡率が上昇傾向で懸念されている。日本の自殺対策は厚生労働省主体のうつ病対策を含めたメンタルヘルス対策が中心となっており、社会や文化により最適な対策が必要だ。(Medister 2012年6月25日)