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日本人の未破裂脳動脈瘤の自然経過

未破裂脳動脈瘤は原因は特定されていないが、高血圧、血流分布の異常などのストレスや、喫煙、遺伝などの動脈壁の脆弱性に起因すると考えられている。中大脳動脈、内頚動脈、前交通動脈、脳底動脈などに発生することがあり、成人の2~6%程度に発見される。未破裂脳動脈瘤の多くは症状が診られないが、動脈瘤が大きくなって、神経を圧迫したり、破裂してくも膜下出血をきたす場合がある。

一般社団法人日本脳神経外科学会の研究グループは、2001年1月から2004年4月を通じて日本国内において新たに同定した未破裂脳動脈瘤患者を登録し、動脈瘤の破裂の有無、死因、定期的なフォローアップ試験の結果のコホート研究を行なって、医学誌「N Engl J Med」に報告(366:2474-2482, June 28, 2012)した。

3mm以上の嚢状動脈瘤がある20歳以上の5720名の患者(68%女性、平均年齢62.5歳)で、研究が行われた。6697例の脳動脈瘤の症例のうち、91%が偶然発見された。 ほとんどの脳動脈瘤は中大脳動脈(36%)、内頸動脈(34%)にあった。脳動脈瘤の平均の大きさは、5.7±3.6 mmだった。フォローアップ期間中の11,660例の脳動脈瘤の事例において、破裂は111人の患者で起こり、0.95%であった。3~4mmの大きさの脳動脈瘤を参照にすると、ハザード比は5~6mmの脳動脈瘤で1.13 (95% CI, 0.58 to 2.22)、7~9mmで3.35 (95% CI, 1.87 to 6.00)、10~24mmで9.09 (95% CI, 5.25 to 15.74)、25mm以上で76.26 (95% CI, 32.76 to 177.54)となり、破裂のリスクは脳動脈瘤の大きさに依存して増加した。中大脳動脈の脳動脈瘤と比べ、前・後交通動脈の脳動脈瘤はより破裂しやすく、ハザード比が前交通動脈で1.90(95% CI, 1.12 to 3.21]、後交通動脈で 2.02 (95% CI, 1.13 to 3.58)だった。動脈瘤の壁の不規則な突起を持つ動脈瘤でも破裂のリスクはハザード比が1.63(95% CI, 1.08 to 2.48)となり、高い結果となった。

この研究では、未破裂脳動脈瘤の自然経過に関し、大きさが大きいほど、中大脳動脈よりも後交通動脈で、不規則な突起を持つ動脈瘤の形状ほど破裂のリスクが高まることが示された。(Medister 2012年7月24日)

脳動脈瘤手術