日本人の関節リウマチ発症関連遺伝子のメタ解析による同定
関節リウマチは慢性炎症を特徴とする自己免疫疾患である。厚生労働省の発表では、国内に約50万人の患者がおり、遺伝因子と環境因子が発症に関与することが示されている。
理化学研究所のゲノム医科学研究センターの山本一彦チームリーダーらは、東京大学、京都大学、東京女子医科大を中心としたGARNETコンソーシアムと、ハーバード大学を中心とした欧米の研究グループとの共同研究により、日本人の関節リウマチに関するゲノムワイド関連解析(GWAS)の大規模なメタ解析を行い、疾患発症に関わる9つの新たな遺伝子領域を発見し、科学誌「Nature Genetics」に掲載(44, 511–516 , 1 May 2012)された。
研究チームは、関節リウマチの患者集団4,074人と非患者集団16,891人について、ヒトゲノム全体に分布する約200万個の一塩基多型を対象に、関節リウマチの発症と関連しているSNPを探索し、更に解析によって発見したSNPについて追認解析を行うため、別に集めた患者集団5,277人と非患者集団21,684人と比較して、結果の再現性を確認した。
新規の遺伝子領域として9つの領域(B3GNT2,ANXA3,CSF2,CD83,NFKBIE,ARID5B,PDE2A-ARAP1,PLD4,PTPN2)を同定し、既報の36の遺伝子領域とあわせて検討を行ったところ、23の遺伝子領域が日本人の関節リウマチ発症に関与し、15の遺伝子領域は欧米人と共通だったことから、遺伝因子に人種差があることが考えられる結果となった。新規の9領域のうち、ANXA3は全身性エリテマトーデスの発症と関連し、B3GNT2 と ARID5Bはバセドウ病の発症と関連した。
なお、ANXA3はカルシウム依存性リン脂質結合蛋白質Annexin IIIの遺伝子をコードしている。B3GNT2 はβ-1,3-N-アセチルグルコサミン転移酵素ファミリーの遺伝子をコードしており、ARID5BはDNAのATリッチサイトに結合性のあるARIDドメインを持つ蛋白質をコードしている。
著者らは、「既存の治療法の効果は、患者ごとに遺伝因子や環境因子が異なるため、患者によって異なり、十分な効果が得られないことがある。今回の研究を発展させ、日本人に適した副作用の少ない、効果的な治療法の開発が期待できる。」とし、今後の薬剤応答性の予測法の確立などを通し、患者ごとのオーダーメード医療の実現に向け、重要な結果を残した。(Medisterニュース 2012年5月25日)